『SPY×FAMILY』ダミアンはなぜ尊い? 三拍子どころかいろいろ兼ね備えた、絶対的ツンデレな魅力を考察

『SPY×FAMILY』ダミアンはなぜ尊い?

 弱冠6歳の男の子に、心を狂わされている。

 その名は、ダミアン・デズモンド。マンガアプリ「少年ジャンプ+」で連載中で、アニメも好評な『SPY×FAMILY』(スパイファミリー)に登場するキャラクターだ。西国の敏腕諜報員の男(コードネーム”黄昏”、ロイド・フォージャー)がとある大きな任務のために、殺し屋の女(コードネーム”いばら姫”、ヨル・フォージャー)と相手の心を読む超能力者の少女(アーニャ・フォージャー)と、お互いに正体を隠した仮初の家族として、生活をスタートさせる。世界の危機に立ち向かう痛快ホームコメディだ。

 ダミアンは黄昏が抱える大きな任務で接触しなくてはならない、東国の国家統一党総裁、ドノバン・デズモンドの息子(次男)である。ドノバンはなかなか表舞台に顔を出すことがなく、唯一現れるのは息子が通う名門校の懇親会のみ。黄昏はアーニャを孤児院から養子として迎え、ダミアンが通う名門イーデン校への入学を成功させる。しかし、懇親会への参加条件として、優秀な成績をおさめて星(ステラ)を獲得し、皇帝の学徒(インペリアル・スカラー)になる必要があり、なかなか骨が折れそうな状況。その他のプランとして、ダミアンを通じてドノバンとの接触を図るため、アーニャとダミアンの交流(ナカヨシ作戦)の後押しも同時に進めることとなった……。

 『#ダミアニャ』のタグがトレンドにあがるように、この2人に関する感想がSNSなどを中心に広がっている。元々、筆者はショタ(かわいい男の子)好きではなかったので、漫画を読んでいる際にはダミアンのことを「生意気な坊ちゃん」くらいに思っていた。だが、アニメを視聴するようになってから漫画を読み返すと、だんだんと自分の感覚が変わってきていることに気づいた。なんなんだ、こ、この気持ちは……。筆者の心を鷲づかみにして離さないダミアン、この引き寄せられる力はなんだろうか。少し冷静になって振り返ってみたい。

※以下、既刊コミックス、アニメ放送のネタバレがあります

 ダミアンとアーニャの初絡みは、コミックス2巻MISSION:8の入学式でのことである。序盤のダミアンは、「こんの生意気なク〇ガキ~~~!」という印象が強い。いわゆるやんちゃで、俺様なわがまま坊ちゃん。オレは国家統一党相当の息子だぞとドヤっては、お近づきになりたい同級生にキャッキャッと囲まれてさらに増長している。そんななか、相手の心が読むことができ、かつ社会的地位/生徒のヒエラルキーに無頓着なアーニャは、わりとクズな考えをしているダミアンに対して皆と反対の態度をとる。おもしろくないダミアンは、嫌味を言ったりちょっとした意地悪をしたりするのだが、笑って流せるのがかっこいいと思っているアーニャは、ニタニタと小バカにしたような余裕の振舞いをみせる。ダミアンは学校ではクールな優等生を気取っているが、こうした思い通りにいかないアーニャの言動や行動に、「チョーシ乗んなよドブスが!!ブスブスブぅーーース!!!」と感情が爆発してしまう。そうだった、まだ6歳なのだと、筆者もふと我に返る。子どもらしさがもろに溢れていてかわいい。

 しかし、あまりにいたずらを続けていたからか、あるとき感情を抑えられなくなったアーニャから顔面に右ストレートが決まり、放心し泣き出すダミアン。翌日、ナカヨシ作戦(父の任務のことは心を読んで大雑把に知っている)のことを思い出したアーニャは、ダミアンに対して謝りに行く。

「いきなりなぐってごめんなさい アーニャほんとはおまえとなかよくしたいです……!」

 このアーニャのしおらしく涙を流す姿にぶわぁっと真っ赤になるダミアン。このあたりから、すでに隠しきれていなかったツンデレが常に顔を覗かせるようになる。唯一自分に対して正面きって向かってくるアーニャ。かわいいところもあるじゃんと思ってしまう気持ちと、そんな恥ずかしいことできるか、絶対ゆるさん!! オレのプライドがゆるさーーーん!! という気持ちの葛藤が丸見えである。学校の先生に対しては敬語なのに、アーニャの父であるロイドに対してはタメ口なのも、アーニャに対して素直になれないツンデレの延長なのだろう。素直に思っていることを認めたくない、うまく伝えることができず、初めての感情に対してとまどい、アンビバレントな振る舞いになってしまうのだ。

 だが、ここで重要なのは、ダミアンはただの生意気なク〇ガキではなかったことだ。ダミアンの行動原理はいい成績をとって星を獲得し、兄貴と同じ皇帝の学徒になること。でないと父親に振り向いてもらえないという気持ちがある。同級生が遊び惚けているなかでも、陰で努力は惜しまず、一生懸命な一面も。実は父上を目標にしていること、幼いながらもデズモンド家の人間としての姿勢を崩さず、立派に振舞うところもあれば、かといって不器用なところもあり、真面目で健気な姿に、筆者は心を打たれてしまった。

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