里見香奈女流四冠の凄さが分かる! 将棋を指す女子たちを描いた漫画が熱い

将棋を指す女子たちを描いた漫画が熱い

 この熱さを、フィクションの側で引っ張っているトップランナーが、『龍と苺』の藍田苺だ。アマチュア竜王戦で優勝し、竜王戦の予選に相当するランキング戦に出場して男子のプロ棋士たちを相手にする。最新第8巻では、いよいよ予選突破なるかといった戦いを繰り広げることになる。四段に上がるだけでも大変な世界で、プロとして活躍する棋士でも臆さず、好勝負を繰り広げる。

 気に入らない男子をいきなり椅子で殴り倒すあたりは、同じ作者の『響~小説家になる方法~』に登場する天才小説家の鮎喰響を受け継いだ主人公といったところ。自分を負かしたプロ棋士を追いかけ、タイトル戦の対局室に乗り込み指そうとして殴り飛ばされるピーキーさも同様だ。実際にこうした行動を取られたら迷惑なことこの上ないが、勝つために足りていないものを求めて動き、結果を出し続けるその前向きさには、学ぶところも少なくない。

 その苺が竜王戦で挑んでいるタイトル戦の本戦出場を、棋王戦コナミグループ杯で実際にやってのけたのが里見女流四冠だ。ここで連勝すれば、あの藤井五冠と対局する可能性もある。フィクションが現実になりそうな状況。フィクションも負けていられないと、『龍と苺』で苺にそれまで以上の戦いを繰り広げさせることになれば、いったいどのような展開が待ち受けているのか。楽しみで仕方がない。

 里見女流四冠は棋王戦の本戦入りを決めたことで、プロの棋戦に出場を続けて好成績を収めた人が得られる棋士編入試験の資格も得た。三段リーグで上位2人に入るのとは別のプロ棋士になれるルートで、五人のプロ棋士と対戦して3勝すれば史上初の「女性棋士」が誕生する。フィクションで幾度となく夢見られた光景だ。

 左藤真通原作で、市丸いろは漫画の『将棋指す獣』(新潮社)というシリーズでは、冒頭でアマチュアから女性初のプロ棋士となった弾塚光七段が、天才棋士の赤烏真天竜を相手に、タイトル戦の天竜戦に臨む場面が登場する。光は奨励会で三段リーグまで行きながら退会し、ブランクをおいて復帰してアマチュアの棋戦で優勝。成績優秀者に与えられる三段リーグ編入試験に臨んだ。

 漫画はここで連載が終了してしまい、どのようにしてプロ棋士になったかは描かれていない。里見女流四冠もかつて所属し、勝ち抜けなかった三段リーグを、過去に複雑な事情を抱えながら復帰を目指した光が、どのように戦ったかを知りたいという要望も多かったのだろう。左真のnoteで連載が再開されたが、他の連載で多忙となり現在はストップしている。再開後に明かされた光の復帰にかける思いの根底に、大きな秘密がありそうだと分かっただけに、今のこの将棋ブームの中で連載が再開され、商業出版へと戻ってくればとても嬉しいのだが。

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