『女の園の星』『スキップとローファー』『サラウンド』……“あの頃”を思い出す、高校の日常を描いた漫画たち
今年高校を卒業し、進学や就職で新しい道に進んだ人たちは、5月になって新生活に慣れていくとともに、高校時代を恋しく思う時期かもしれない。卒業して時間が経っていても、勉学や部活動、恋愛など特別な思い出が残る人も多いのではないだろうか。卒業したあとに地元を離れると高校との接点は少なくなり、社会人となってから学校内へ足を踏み入れたことがない人も多いはず。
少年少女が主人公として描かれる漫画は学校が舞台となっている作品が多く、学校に通っていたころを思い出すトリガーにもなりうるだろう。あの頃の気持ちを思い出したい人へ向けて、本稿では高校時代が描かれている良作の一部を紹介したい。
『女の園の星』
「このマンガがすごい!2021(オンナ編)」をはじめ、数多くの漫画賞に選ばれている『女の園の星』。成森女子高等学校を舞台に2年4組の担任・星先生をはじめとする先生や女子生徒たちの日常が描かれる作品だ。
本作で描かれるのは現実にギリギリ存在するかもしれない日常の数々だ。当番制で書くことになっている学級日誌の備考欄で絵しりとりを繰り広げ、自習中に教室のベランダでシャボン玉を吹きながら悩みを相談し、先生が中学生だったころの写真をステッカーにするーー。
もしかしたら同じようなことをしている高校生がいるかもしれない……と思ってしまうような日常から衝撃や面白さを覚えつつ、高校生らしい遊び心を感じ懐かしさも覚える。
そんな生徒たちの行動と共に、本作では校内や居酒屋で会話をする先生たちや、お昼休みの食事をとる先生の姿も描かれる。とくに先生がご飯を食べる様子を目にしたことのない人は多いのではないだろうか。
くだらないことこそ面白くて仕方がなかった学校での日々や、あの頃は目にすることができなかった先生たちの一面など、高校生時代を俯瞰して振り返り楽しむことができる作品であろう。
『スキップとローファー』
2021年にアニメ化が決定した『スキップとローファー』も高校生活を描いた作品だ。少し抜けている女子高生・岩倉美津未が主人公であり、石川県出身の彼女が東京の高校へ入学する初日から物語は始まる。
田舎町から都会の高校に進学した美津未が最初にぶつかる壁は同級生との人間関係。中学校の同級生が8人しかいなかったこともあり、どのようにして友達をつくるのかに悩む美津未の姿が描かれる。そんな彼女をはじめ、美津未の周りには明るく振舞いながらも心のなかで他者との付き合い方、もしくは自己の在り方について悩むキャラクターが集まる。
部活動や放課後に訪れるカフェ、文化祭など学校生活特有のシチュエーションと共に描かれる、思春期特有の感情を抱く彼ら彼女らの姿。それは大人になった人にとっては懐かしくもあり、新鮮さも感じることができるはずだ。
また美津未が石川県のとある田舎町の出身であることから、夏休みに地元へ帰省する様子も描かれる。家族そろってご飯を食べながら甲子園のTV中継を眺め、畳のうえで座布団を枕にしながら昼寝をして、朝ごはんにスイカを食べ台所に立つ母親の背中を眺めるーー。美津未が過ごす夏休みのワンシーンは、田舎で生まれ育った人、進学や就職を気に上京した人にとって、ひと味ちがった懐かしさを感じることができるだろう。