80年代少年漫画のヒロインは、なぜ今も輝き続けるのか

80年代少年漫画のヒロインといえば?

 漫画史を語るうえで欠かせないのは、作品の魅力と切っても切り離せない、個性豊かな主人公たちだ。多くの作品で人気投票を行うと1位になるのは彼ら/彼女らであり、漫画の世界の中心で物語を動かす。連載終了から時を経ても、リアルタイムで読者に感動を与え続けている主人公も少なくない。

 一方で「少年漫画」に絞ってみると、主人公が恋をする、あるいは同等の存在感で物語に関与する「ヒロイン」と呼ばれる登場人物が高い人気を誇り、読者を魅了してやまない。

 本稿では、少年漫画に数々のヒット作が生まれた1980年代に話題をさらったヒロインで、今も読者に愛されている人物を3人ピックアップした。彼女たちのどのような特徴が、今も読者に愛される理由になったのだろうか

少年漫画史に残るヒロインと言えば?

 漫画の人気ヒロインを語るうえで欠かせないのは、『うる星やつら』のラムだ。世代を問わず今も愛されているヒロインの筆頭だろう。

 彼女になぜこうも惹かれるのか。その理由は彼女が、漫画文化が成熟し数多くの人気作が生まれた今もなお輝く、独特の個性を持っているからに他ならない。

 ふだんは活動的で自由気ままに見えるラム。しかし主人公のあたるに恋をして、自分の生まれ育った場所とは違う星·地球に押しかけて住むという、思いきりの良さと積極性は、並たいていのものではない。そして、主人公のあたるへの一途な想いは何があっても変わることがない。

 ラムの性格のもうひとつの特徴は、直情型であることだ。女性が大好きなあたるが浮気をしようとすると、我慢することなく怒りを露わにして電撃を放つ。彼女のそんな一面は宇宙人でありながら、人間らしさを持ったヒロインとして読者の目に映り、ラムを象徴する「~だっちゃ」という言葉遣いによって、ラムの人間らしさ(地球人らしさ)はより強調される。

 とはいえ空を飛んだり電撃を放ったりする行動は宇宙人そのもので、ラムが併せ持つ宇宙人らしさと人間(地球人)らしさが、現実には存在しえない夢のヒロインという、独自の魅力に繋がっていると言えるだろう。

読者の永遠の憧れ

 逆に、現実に存在しそうで、しかし読者の理想を体現するヒロインと言えば誰だろうか。『タッチ』の浅倉南や『幽☆遊☆白書』の雪村螢子など、素朴でありながら心やさしい少女たちは、クラスにいそうな等身大のヒロインとして読者の目に映る。

 そして、やさしい性格は、突き詰めると神々しさにまで達する。『北斗の拳』の主人公、ケンシロウが愛するユリアは、その美貌で多くの男性から求愛されるが、その魅力はルックスだけではない。

 傷を癒す力など、不思議な能力を持つユリアが「現実に存在しそうなヒロイン」だと思う人はいないだろう。しかし、後の漫画に登場する「隣の席にいそうなヒロイン」たちの根幹には、ユリアの描かれ方が影響しているのではと、私は考えている。

 立場も損得も考えず、自分の命で人が救えるのなら、迷わず差し出そうとする。不治の病に冒され、息を引き取る前には、愛するケンシロウが自分以外の女性と結ばれ、幸せになることを心から願うーー。

 戦乱の時代という舞台設定ゆえに、優しさが極端な形で表現されている面があり、ユリアは神々しく感じられるが、浅倉南や雪村螢子が主人公に対して見せる姿は、その系譜にあるように思えるのだ。



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