漫画やイラストで“恐怖”を表現するポイントは? プロイラストレーターが明かす「情報量」の魔術
漫画やイラストにおける「恐怖」とはどんな技術で表現されているのか。 そんなことを学べる動画がYouTubeにアップされた。
動画を公開したのは「ポケモンカード公認イラストレーター」としても活動するさいとうなおき氏。さいとう氏は視聴者のイラストに対して上達のためのアドバイスを送る「気まぐれ添削」と題した動画を、YouTubeで発信している。チャンネルは2019年10月1日に誕生し、以降、着実にファン数を拡大、現在では登録者数95万人超を誇る(※5月1日確認時)。
4月30日にアップされた動画「【気まぐれ添削90】『恐怖』の描き方、解説します!」では、ペンネーム・スミカさんによる、不気味で恐ろしい男性キャラクター「エンラ」のイラストを添削することに。スミカさんは「色塗りについて教えてほしいです。特に洋服や髪の毛のところです」とリクエストした。
まずさいとう氏はイラストを受け「怖くて不気味な絵の内容に反して、やりたいことがすごくはっきりしていてすごく気持ちの良いイラストです。独特なセンスの色使いを持っていて、鈍い色を使っているんだけれども鮮やかに見える工夫が行われていて、センスが素晴らしい方です」と評価した。
その上でさいとう氏は「恐怖を描きたいとのことですが、その恐怖が画面全体に分散されてしまっています」「全体的に恐怖の色使いがなされているが、いまいち見ている人にそれが直感で伝わってこないんです。一枚のガラスを隔てた世界での出来事のような感じに見えてしまいます」と指摘した。不気味さを詰め込み、画面を恐怖で満たせばいい、というわけではないというのは、目から鱗だ。
それからさいとう氏は大幅な変更を施していく。キャラクターをドアップで映し、見る人に与える情報量をグッと狭めた。そしてキャラクターの目線を真っ正面に直すことで、ガラス越しの世界ではなく、より恐怖感がダイレクトに伝わってくるように工夫した。
さらにまつ毛や下まつ毛、目尻の部分などの密度をアップさせて、迫力を加えていく。それからさいとう氏は「恐怖を表現する時の1番のポイントは線を増やすことです」と断言。「楳図かずおさんのマンガを見てほしいのですが、あれも線を重ねに重ねてシワや陰影を強調しています。そうすることで見てる人に恐怖感を与えることができるのです」と解説した。