ダイヤのA、MAJOR、ONE OUTS……野球漫画で魔球“ナックルボール”はどう描かれてきたか

野球漫画でナックルはどう描かれてきたか

『ONE OUTS』ーー卑劣なナックル

 最後は頭脳が試される“場外戦”も描かれる、異色の野球漫画『ONE OUTS』から、神戸ブルーマーズのリリーフエースとして君臨するスコット·ウィリアムス。ブルーマーズはサイン盗みや故意に相手選手を負傷させるダーティな戦術を厭わないチームであり、ウィリアムスもそのチームの看板選手だけあって、大きな変化を与えるためにボールの側面に水を吸わせた“偏心ボール”を使用する。

 偏心ボールというイカサマを使うだけあって、ウィリアムスのナックルはシンカーに似た切れ味鋭い軌道を描き、なかなか打ち崩すことができない。しかし、偏心ボールをキャッチャーがウィリアムスに渡した場合、次の球は100%ナックルを投げるということを主人公・渡久地東亜に見破られ、結果として場外弾を浴び、振り逃げで出塁され、二盗、三盗を決められ……と散々な目に遭うことに。キャッチャーがプロテクターの裏に偏心ボールを隠していたことを逆手に取られ、ホームスチールまで決められる始末。ハマれば“卑怯”なほど強力なナックルボールという球種を軸に据えたからこそ、攻略のカタルシスが生まれたエピソードだと言えるだろう。

 このように、多様な描かれ方をしているナックルボール。漫画においては強者を倒す刃にもなれば、弱者に攻略の隙を与える蜘蛛の糸にもなり、物語のスパイスとしての機能は高そうだ。今後も野球漫画で多くのナックルボーラーが活躍してくれることに期待したい。

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