もし村上春樹(偽)が村上春樹ライブラリーを訪れたら? 新たな文化拠点・早大国際文学館レポート
村上春樹の書斎を再現した部屋へ
「ここはオムレツを出しますか?」
と聞いてみた。いいジャズ喫茶は、わりに悪くないオムレツを出すものだ。
「やっぱりあなたは変わっている」
沈黙。
時計の針は14時を差していた。
備え付けのテレビからは退屈なワイドショーが流れていた。コメンテーターが当たり障りのないことをいい、お笑い芸人がそれに相槌を打つ。まるでT型フォードのような昼下がりだ。それ以上でもそれ以下でもない。
その横には羊男の絵が壁に描かれており、フォトスポットだと権さん。ハイ、チーズ!のかわりに、ファンは、ハイ、ハルキ!といって写真を撮るという。
「やれやれ」
他にも、学生が運営するカフェ(ツナとハムのサンドウィッチは売っていない)やラジオブース、なんかもあり、村上春樹の私物レコードが聴ける部屋では、早稲田の学生なら誰でも入って作業してよく、全員がMacBookを使っていた。
僕は少しだけビル・ゲイツの気持ちを想像しようとしたが、ビル・ゲイツの気持ちなんてわかるわけがなかった。かといってスティーブ・ジョブズの気持ちがわかるわけでもない。イーブンパーだ。
村上春樹の書斎を再現した部屋では、村上春樹のような小説を書いている自分を夢想したが、どうしても日本刀を持った角川春樹しか出てこなかった。僕の想像力なんて所詮そんなもんだ。ようは俗物なのだ。
ここには村上春樹に関わるものなら何でもあるような錯覚に陥るようだった。でも、そうじゃないのかもしれない。ただ一ついえることは、
理解は誤解の総体
だということだ。ハッピー・バースデイ、アンド、ホワイト・クリスマス。