「ジャンプ+」で話題沸騰! 魔法少女×お仕事マンガ『株式会社マジルミエ』が新しくておもしろい

魔法少女×お仕事『株式会社マジルミエ』

 仕事は、社会を生きるほとんど全ての人にとって重大な関心ごとだ。

 なぜなら、働かないと生きていけないから。それ故、人生のかなりの多くの時間を仕事に費やすことになるからだ。

 仕事には人の数だけ物語がある。だから「仕事」をテーマにした物語は面白い。誰しも一度はなぜ働くのかと葛藤したことがあるから、「仕事」の物語は多くの人にとって自分ごとの物語になる。

 「少年ジャンプ+」にて連載中で、2月に第一巻が発売された『株式会社マジルミエ』は、まさに「仕事」をテーマにした作品だ。就活で自分を見失いそうになった一人の女の子が、魔法少女ベンチャー企業と出会い、仕事を通じて成長していく過程を描いた、一風変わったお仕事ものであり、魔法少女ものだ。

就活に悩む女子大生が魔法少女に

 本作は、魔法少女が職業として定着している世界を描いている。魔法少女は、怪異と呼ばれる自然災害の一種を鎮静化し、社会の安全を守る仕事を担っており、数多くの魔法少女企業が存在し、大手から中小企業まで様々な会社が存在する。

 魔法少女らしく変身コスチュームもあるが、変身アイテムが社員証だったり、コスチュームや魔法自体をエンジニアが開発することも可能。移動手段はホウキだが、ジェット噴射のついたSFチックなガジェットで、怪異を封印するために用いられるのは、USBメモリのような装置だ。魔法と科学が融合した世界観と言えるだろう。

 主人公の桜木カナは、就職活動中の大学生で、とりたてて個性のない人物だと本人は感じている。将来、自分がどうなりたいのか明確なビジョンはなく、地味な存在で、就活面接では「自分の言葉で語ってみてください」と面接官に言われてしまう。

 人の役にたつのが好きな彼女だが、自分はどうすれば社会で人の役に立てるのかわからないでいる。就職活動中は、面接で「あなたは弊社にどのように貢献できますか」としょっちゅう聞かれる。この就活は、「人の役に立てるのか」を強制的に考えさせるイベントと言えるかもしれない。そんな中で、自分に何ができるのかわからなくなり、自分がやりたいことも見失いがちになる。本作は、主人公がそういう状況に置かれている状態から始まる。

 カナは、真面目な就活生だ。記憶力が良い努力家である彼女は、面接を受ける会社を徹底的にリサーチし、面接官さえ知らない企業の情報まで披露してみせる。しかし、面接でノーを突き付けられるたびに、自分が社会に必要とされない、いらない人間なのではないかと思ってしまう。就活中は、カナのような真面目な子ほど、そういう考えに囚われがちだ。

 カナは、そんな時にベンチャー企業に属する魔法少女越谷仁美と出会う。子どものころ、女の子なら一度は憧れる魔法少女を目の当たりにして、カナがその企業への就職を決めることから物語が動き出す。

 大手企業中心に面接を受けていたと思しきカナにとって、ベンチャー企業の空気感は新鮮だった。「今まで見た大企業とは全然違うけど・・・、建前じゃない言葉が飛び交ってて・・・、何だか・・・学校の部室みたいな・・・」と感じるカナだが、その代わり、入社即、責任ある仕事をせねばならない。大人数が関わる大企業では、目の前の仕事が何の役に立つかわからない瞬間がしばしばあるが、ベンチャーでは「どんな新人もすぐプロになる」。というより、積極的に調べ、提案できる素養がないとベンチャーではやっていけない。だからこそ、カナにとっては自分が「役に立っている」実感をダイレクトに感じ取れた。

 今後物語が進むにつれ、様々な企業と魔法少女が登場するだろうから、おそらく本作は単純なベンチャー礼賛に向かわないと思うが、序盤の物語では大企業にはないベンチャーの魅力が端的に描かれているという点は本作の特色と言える。

 また、カナと越谷以外の同僚が個性派ぞろいなのもベンチャーらしい空気を醸し出している。社長の重本はおじさんだがフリフリのドレスを着て仕事をしている。越谷いわく「魔法少女に魂売ってる」らしい重本社長の、魔法少女に対する考えもそのうち描かれることになるだろう。本作の世界が女性しか魔法少女になれないものなのかどうかまでは、まだ描かれていないが、その辺りも重本社長とともに描かれるのかもしれない。

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