『鉄腕アトム』『ドラゴンボール』『キテレツ大百科』……あの頃の空想はどこまで現実化した?

未来を予測した漫画4選

 小説や映画だけでなく、漫画においても、地球の未来を描いたSF作品は人気を博してきた。そのなかで、発表当時は「全くの空想」だったことが現実になることも、多々ある。今回はそんな事例を検証してみたい。

ロボットが人間を助ける

 漫画界の巨匠、手塚治虫原作の『鉄腕アトム』。1952年から68年に『少年』で連載され、1963年にTVアニメ化されると、国民的人気となった。

 主人公のアトムは空を飛ぶ、自由に言語を操ることができるなどの高い能力を有し、地球の危機を救っていた。「ロボットが人間を助けてくれる」という構図は、昭和の時代を生きた子供たちに大きな夢と希望を与えたと聞く。ちなみに、アトムが生まれたのは2003年4月7日だった。

 ロボットが人間を助けるという社会は、2010年代から一般的になりつつある。現在は部屋を掃除するロボットや介護、飲食店や商業施設などの案内ロボットも普及し、重宝されている。手塚治虫は「ロボットが人間を助ける社会が来る」ことを、予見していたのだ。

 YouTubeでは『手塚プロダクション公式チャンネル』が、第1話を公開している。舞台は2030年で、空中に浮かぶタイヤのない自動車など実現されていない未来が描かれている。

【公式】鉄腕アトム(1980) 第1話『アトム誕生』

スカウター

 鳥山明の『ドラゴンボール』で、フリーザやベジータら一部の登場人物が使用していたメガネ型の端末、スカウター。

 相手の戦闘力を算出しレンズに出力するシステムに加え、時計やアラート機能なども有し、重宝されていた。その一方で、高すぎる戦闘力を計測すると爆発するという弱点も持っていた。

 『ドラゴンボール』読者が憧れたスカウターは、2010年代に入り、現実に近いものとなる。Googleが2012年に発売したメガネ型ARデバイス「Google Glass」はメガネ型で情報がレンズに表示されるというもので、この着想はスカウターに近いものがあった。また、スカウターに頼りすぎることで人類が持つ数値化されない気力などを加味した真の戦闘力を見抜けず、負けに至ってしまったケースも、スマホに頼りすぎる現代に似たものがあるといえるのでは。

聞き耳ずきん

 藤子・F・不二雄の人気漫画、『キテレツ大百科』。主人公の木手英一が先祖のキテレツ斎が残した奇天烈大百科をベースに、さまざまな発明道具を作り出していくという漫画である。

 1988年から96年まで日曜日の19時からアニメでも放送され、高い人気を誇った本作の中で、異彩を放った発明道具が「聞き耳ずきん」だ。このずきんはかぶると動物の脳波をキャッチし、意味を分析して人間の言葉に翻訳するというもの。つまり、動物と会話できるというわけだ。

 聞き耳ずきんのようにかぶると自由に意思疎通ができるデバイスは開発されていないが、スマートフォンのアプリで犬の心拍数の情報から精神状態を把握し感情を読み取るというアプリが登場している。完璧な会話は難しいが、聞き耳ずきんの発想に近いといえそうだ。

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