三浦建太郎はガッツが剣を振るうように漫画を描いていたーー『ベルセルク』第41巻に寄せて

『ベルセルク』41巻に寄せて

 「何でもあり」が成立するファンタジーだからこそ、物語と画に説得力が生まれるように妥協することなく追求し続けたのだろう。『ベルセルク』を読んでいると安易な嘘を許さず作品の強度を高めて行こうとする作者の姿勢に圧倒されるのだが、同時に「ここまでやる必要はあるのか?」と思うことも多かった。

 それは不満というよりは作者に対する心配で、我が身を顧みずに無茶苦茶な戦いを繰り返すガッツを見ている時の気持ちに近かった。

 おそらく、三浦建太郎はガッツが剣を振るうように漫画を描いていたのだろう。それを強く感じるのは夜中に襲ってくる夢魔(インキュバス)と戦う場面。

 「一晩かけて血ヘドを吐きつくせば」「決まって朝には泥の様に眠れるからな」という15巻の台詞が象徴的だが、徹夜で夢魔と格闘するガッツの姿を見ていると、こんな風に漫画を描いていたのかもしれないと想像してしまう。

 三浦建太郎は、自分が感じていることを身体的な手触りとして漫画の中に落とし込む描写がとても上手だった。ダークファンタジーの傑作であると同時に、作者の心境が常に滲み出ている私小説のような漫画だったというのが『ベルセルク』に対する印象である。

 だからこそ、物語後半で、ガッツの周りに新たな仲間が集うようになり、彼の孤独が少しずつ癒やされていく姿には救いのようなものを感じた。

 「蝕」という圧倒的絶望を描いてしまった三浦建太郎は、希望を掴もうと最後まで足掻き続けてくれた。作品全体の評価は今後の展開を観るまで保留だが、作者が貫いた漫画家としての生き様は最後まで素晴らしかったと思う。

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