桑田佳祐が“キングオブポップ”であり続ける理由 最新エッセイから感じる身近さ

桑田佳祐がキングオブポップであり続ける由縁

 そして、これは桑田佳祐の音楽観が色濃く反映されたエッセイ集だ。10年前に東日本大震災の復興支援ライブとして桑田が開催した「宮城ライブ」以降、彼が信条としている「悲しさや苦痛があっての音楽」「音楽があればどうにかなる」という感覚が、音楽をテーマとしたエッセイを通して詰め込まれているのではないだろうか。桑田がほぼすべての項で音楽やエンタテイメントに触れているのは、希望を持ちにくかったコロナ禍の中で、音楽があればどうにかなると彼が信じているからこそ。この2年間の桑田の活動と併せてこのエッセイを読むと、彼の音楽観がより真に迫ってくる。桑田がコロナ禍の中、常に音楽を軸にエッセイを連載し続けてきたのは、もしかすると「音楽は不要不急」だと音楽業界全体が後ろ指を指されたことへのアンサーなのかもしれない。

 桑田佳祐と場末のスナックで飲みかわしながら話しているような身近さがありながら、普段は伺い知れない桑田佳祐というひとりの人間の素の部分が垣間見える『ポップス歌手の耐えられない軽さ』。発売前から2度の重版も決定し、電子書籍としての販売もスタートしているなど早くも広がりを見せている。ぜひ手にして、日本の誇る“キングオブポップ”のチャーミングなひととなりと43年の活動が生んだ決してブレない唯一無二の音楽観を感じてほしい。

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