木之本桜はなぜ愛されるのか? 大人目線で考える『カードキャプターさくら』の魅力
1996年に「なかよし」(講談社)で連載が開始され、今年で25周年を迎えた『カードキャプターさくら』。2016年には「クリアカード編」がスタートし、現在コミックスは最新11巻まで発売されている。「子どものころ読んでいた」と懐かしく思う人もいるかもしれないが、『カードキャプターさくら』はまだまだ現在進行形で話が進んでいる。そして、大人になった今だからこそ楽しめる要素が満載である。
特に主人公である木之本桜から、大人が学べることは少なくない。桜は世代を超えたファンに愛されて、かつ作品内でも愛され主人公として輝いているのだ。本記事では、木之本 桜がなぜ愛されるのか、その理由を考察していきたい。
クリアカード編
前作でクロウ・リードが作った魔法のカードを「さくらカード」に変え、カードの真の持ち主となった桜。ライバルであった小狼ともお互いに想いを伝え合うが、小狼は香港に帰ることに。クリアカード編では、友枝中学校に進学した桜が入学式で小狼と再会するところから始まる。その夜、桜はカードが砕け散る夢を見る。目覚めた桜が確認するとカードは透明になって魔力を失っていた。その後、封印の鍵を授けられる夢を見ると、また実際に夢で見た鍵が手元にあり……。新たに夢の杖を手にすることになった桜は、再びカードを集めることになる。
見守られ愛される主人公・木之本 桜
ファンから愛される主人公は数多くいても、作品内の登場人物からこれほど愛されている主人公はいただろうか。実際に桜が愛されていることがわかる描写が何度も登場する。以下はクリアカード編に登場する新キャラクター、ユナ・D・海渡のセリフである。
「彼女は本当に愛されている。関わる色んな人達に」
『カードキャプターさくら クリアカード編』7巻P83より
実際に桜と関わると彼女を愛さざるを得なくなっていく様子が前作でも描写されていた。そして、愛されるだけでなく信頼され、周囲の人々から見守られている桜。それは遠く離れたイギリスにいるクロウ・リードの生まれ変わりである、エリオルも例外ではない。
「さくらさんとさくらさんの大切なひとたちのためですから」
『カードキャプターさくら クリアカード編』4巻P63より
小狼がユナ・D・海渡についてエリオルに相談するシーンで、桜の近くに強い魔力を持った海渡がいることを心配したエリオルが発した言葉である。桜のために動いてくれる人間は、エリオルだけに限らない。
「ぼくが出来る事を探してやっているだけなんだよ。大好きなひと達のために」
『カードキャプターさくら クリアカード編』9巻P141より
上記は、桜の兄の友人である雪兎が桜のために月峰神社にある月の力と契約したことが発覚したシーン。友枝町近辺を昼から夜に変えるほどの魔法が使えるようになるには、かなりの対価が必要であることが想像できる。
様々な人間から見守られ助けられる桜。ではなぜそこまで愛されるのだろうか。
素直に言葉にする桜
桜が愛される理由の一つに「自分の思いを素直に言葉にする」ことが挙げられるだろう。例えば以下のようなセリフがある。
「知世ちゃんが作ってくれたお洋服着るといっぱい元気になれるの。いつもありがとう」
『カードキャプターさくら クリアカード編』1巻P131より「大切なひととの思い出は宝物だからそのひとにとっても同じだと本当にうれしいよね。思い出といっしょにずっと幸せな気持ちでいてほしい。秋穂ちゃんもだよ。わたしにとってずっと幸せでいてほしいひと。わたしのお友達でとても大切な人だから」
『カードキャプターさくら クリアカード編』10巻P136-137より
普段から周りの人間に大切に思っていることを伝えられる桜。それが当たり前でないことを、大人になった私たちは知っている。感謝や愛情を表現するのは気恥ずかしくもあり、つい言葉にすることを忘れがちだが、桜のように素直に気持ちを言葉にすることが大切なのだと、あらためて気付かされる。