【漫画】人型のダイコンと中学生男子の交流が教えてくれる“自分らしさ”とは? 心温まる結末がTwitterで話題に

ーー中学生の男の子「ミノル」の葛藤から懐かしさを、だいこんちゃんとの出会いから生まれた変化に勇気を覚えた作品でした。創作のきっかけを教えてください。

内野こめこ(以下、内野):変わった形の大根ってよくありますよね。人間みたいな大根も写真で何度も見かけたりして、こういう大根が言葉をしゃべったり服を着たりしたら面白いなと思ったことが創作のきっかけです。

 大根に服を着せる主人公は女の子にするか、男の子にするかと最初は考えたのですが、私の次男が可愛いもの好きだったり、知人の息子が手芸好きだったりといったことを思い出して、男の子の「ミノル」ができました。

ーー多様性の尊重が社会的にも大きな課題になっていると感じますが、ミノルくんの葛藤から未だに性別に関する生きづらさがあることを考えさせられました。

内野:育児をする中で、私たちが子どもの頃より「男の子はこうだ、女の子はこうだ」という考えは薄くなっているのだろうとなんとなく思っていました。しかし息子たちが年中さんくらいになると女の子はピンクが好き、男の子は青が好きと言うようになり、性別に関する既成概念は意外と根強いものなんだなと気付いて驚きました。

 私自身、小さいころは洋服のフリルやピンク色が苦手だったこともあり、息子たちには「私は青色が1番好きだよ」と話し、なにが好きか、どんなことが得意かなどは性別は関係なく人それぞれだと伝えています。

ーー作中にはミノルくんを肯定する人物が多く登場しますが、本人は周りの目をとても気にする姿が描かれていたと感じます。

内野:作中ではミノルくんをからかう子も登場しますが、とくに思春期のころは誰かに否定されると、それを必要以上に重く受け止めてしまうところがあるかと思っています。

 ミノルくんの場合は自分でつくったものをお母さんに褒められ、手芸クラブでも女の子と一緒に楽しんできたので、同級生の男の子の一言がはじめての否定でした。ミノルくんもクラブ以外では日々同級生の男の子たちの中で過ごしていたので、そこで否定されるというのは、コミュニティから弾き出される不安に襲われるような出来事だったと思います。それで隠して生きていこうとするわけですが……。女の子には女の子の生きづらさがあるけれども、男の子には男の子の生きづらさもあるよなと思っています。

ーー生きづらさを考えるなかで、本作に込めた思いを教えてください。

内野:物語の終盤でお母さんやおじいちゃんはミノルくんにある言葉をかけるのですが、自分自身もそんなことを家族から言われたかったなと思っていました。犯罪的な行為など許されざることなら当然ダメですが、そうでない本人の意志はある程度見守ってほしかったなと。

 これから私のふたりの息子が壁にぶち当たることもあるのかなと思うにつれ、自分らしさを持ったまま生きても大丈夫だと思っていてほしいですし、大丈夫だと言ってあげられたらいいなと思っています。

ーー物語の終盤でおじいちゃんがミノルくんに話した言葉に込めた思いを教えてください。

内野:自分の好きなことをしていてもしんどくなったり、追い詰められたりすることがあると思います。そのときに心の逃げ場や支えがないことはとてもつらいですよね。もちろん、逃げ場がないからこそ頑張ろうと思える場合もあるかもしれませんが、帰れる場所があるからこそできるところまで頑張ろうと思える場合もあるのではないでしょうか。

 ミノルくんにはちゃんと受け入れてくれる人がいて、受け入れてくれる場所がある。それを分かっていて進むのと、分からないまま進むのとでは、ミノルくんの心の持ちようが全然違うと思いました。だからこそおじいちゃんには「やってこい」と言ってほしいという気持ちであのシーンは描きました。

 ミノルくんの将来はどこか洋服をつくるところにずっと勤めてもいいし、ある程度のところで実家に戻り、農業をしつつインターネットを利用してオーダーメイドの服をつくるなどの道もあるかもと考えていました。最終的にミノルくんがどちらを選ぶかは分かりませんが、どちらにしても彼にとって満足できる道になると思います。

 

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