ぜんぶ君のせいだ。如月愛海が明かす、小説執筆のウラ側 「人生の苦しいほうにフォーカスを当てたい」

如月愛海が明かす、小説執筆のウラ側

「いろんな人生を歩みたい」から始まった如月愛海の歩み

――先ほど境目のない話をされていましたけれども、何かの間違いで歯車が狂ってしまったとして、如月さんご自身は叶えてほしい願いというのはありますか?

如月:えー!? どんな罪を犯したかによりますけど……ないと思いますね。うん、ないです。後悔することってないんですよね。そうなってしまったら「仕方ない」って割り切るタイプだから。

――なのに、この物語を書いているというのは不思議ですね(笑)。

如月:本当ですね(笑)。でも、きっとたくさんの人に会うお仕事だからかもしれないですね。ときどき、私の夢にファンの方が自分の夢をのせてくださることがあって。そういう姿を見てきたからこそ、私の中にはないけれど誰かに願いを託すっていう姿が自然と思い浮かんだのかもしれないです。それと、私は死んだときにも後悔しないように、中2のころから携帯に遺書を入れていて……。

――ええ? 遺書ですか?

如月:はい。いつ死んでもいいようにっていうとあれですけど、「こうしてくれたらいいよ」みたいなのをメモにしていて。今もそれを更新しつつメンバーとか周りの人に伝えています。きっかけは、本当ありきたりなんですけど、中学生くらいのときって、いろんなことに悩むじゃないですか。それでなんとなく30歳くらいまでに死ぬって仮定して今を生きようと思ったんですよね。楽観的になるために死を意識する必要な時期だった。でもそうなったら30歳で死ぬって結構周囲を驚かせちゃうかなって思ったので「楽しく生きています」で始まって「この方たちに感謝しています」で締めるみたいな内容で。私の死をきっかけに誰も恨んだり、責めたりしないでほしいっていうだけですね、願いは。

――最期の願いが、残った人たちの心の平穏とは!

如月:例えばの話なんですけど、私が何かのきっかけで殺されちゃったとするじゃないですか。でも、たぶん私自身は死んでしまったら何の感情も抱けないと思うんです。だから、私は悲しまないので、みなさんも悲しまないでくださいって。私自身も自分の人生を生きたから、みんなも自分の人生を生きてねって。自分を左右されすぎないでほしくて。小さいころから、それはずっと変わらなくて。例えば、子どもって近くの大人にすごく影響されるじゃないですか。でも、大人だって間違えたりするし、子どものほうがわかっているときだってある。自分の人生は決めたほうがいいよって。

――そうですね。それをすでに中学生のころに思えていたとは。

如月:思い出したんですけど、一時期本当に家がイヤでなかなか帰らなかった時期があったんですよ。何度怒られても言うこと聞かない性格で、多分手に負えなかったんでしょうね。母が父に「あの子の人生なんだから、あの子が自分で責任を取るでしょう」って言っていたって兄伝いに聞いたんです。そのとき「自己責任」という概念が生まれたっていうか。もちろんまだ最終的に大人が責任を取らざるを得ない年齢ではあったんですけど、自分がやったことに対して自分でケツを拭くことができれば、自分でやりたいことを選択していいんだって思えたんですよね。

――その「自分で責任取る」という言葉も、そのくらいの年ごろだと「見放された」とネガティブにとりかねないと思うのですが、すごくまっすぐに受けとられたんですね。精神的にすごく成熟していたように感じました。

如月:成熟していたんですかね? なんか「親も人間」みたいなことは結構早めに気づいていたんだと思うんです。大人のほうが周囲に振り回されて意見がコロコロ変わることもあるじゃないですか。だから「自己責任」という考えを手にしてからは、その迷いがなくなってすごく生きやすくなりました。夏休みの宿題も最初の3日間でぜんぶ終わらせて、文句を言わせなくなったり(笑)。

――それかなりストイックですね(笑)。出てくるエピソードが面白くて、如月さんのエッセイもぜひ読んでみたくなりました。

如月:いやー、エッセイは難しいですね。自分の話は自分で面白いと思えないので。こうやって話す分には、聞いてくださる方の反応で「ああ楽しんでもらえた」ってわかるんですけど、本にして書いている間は、「これ、誰に響くんだ?」ってなっちゃいそう(笑)。自叙伝を書くにはまだまだやるべきことをやり遂げないと、って思っています。

――如月さんご自身は、どなたかのエッセイや自叙伝を読んで憧れを持ったり、こういう人になりたいと考えたりしたことはありませんか?

如月:それがないんです。もちろんすごい人だなっていう尊敬はいろんな人に対してあるんですけど、「この人のようになりたい」っていう願望がずっとなくて。憧れて真似たとしても、その人を超えることはないじゃないですか。もしかしたら「すごいな」って尊敬する人の成分を入れないようにしているのかもしれないですね。だから、子どものころからなりたいものっていうのも一つにしぼりきれなくて。それで、最初は女優を目指そうって思ったんです。

――なるほど、いろんな人生を生きられるということですね。

如月:そうです、そうです。その職業への憧れというよりも、自分の人生をどう豊かにするかっていう感覚から導き出した答えで。そういう意味では、何でも自分でやらせてもらえるコドモメンタルっていう事務所は、最高の環境だったんですよ。「演者にも、作り手側にもなれるの? 最高!」って。それこそ「自分でケツが拭ければなんでもやっていい」の最高峰みたいな場所なので(笑)。

――結果、小説家という新しい人生も歩くことができましたね。

如月:本当ですね。やりたいことを一つずつ取り組んできたら、今ココまで歩いてきたという感じです。ときどき異なるペンネームで全く違うジャンルの小説を書かれる方がいらっしゃるじゃないですか。あの気持ちが少しわかるというか。ありがたいことに“如月愛海“っていう人格を6年やっていて、それはあのテレビドラマの続きを1人で妄想していたメグミちゃんの延長ではあるけど、ちょっと違う人間なんですよ。その感覚がすごく心地よくて楽しいですね。いつか別の名前でもっと違うジャンルの小説を書いて、「実は私でした」みたいなのもやりたくなっちゃうかもしれないです。

――それは楽しみですね。考察しがいがありそうです。

如月:きっと「これは如月愛海じゃないと書けないやつだ」って、すぐにバレちゃうんじゃないですかね。みなさん分析力が半端ないので(笑)。

――そんな作品が作れたときには、またインタビューをさせてください! ともあれ、まずは下巻の発売を楽しみにしています。

如月:ありがとうございます。ネタバレを気にせず話せる日が私も楽しみです(笑)。そして、いろいろと成し遂げていつか“如月愛海“というストーリーも完結されられるように頑張りますので、みなさんぜひ見届けてください!

■オーディオドラマ付きノベル
『縁罪』
著者:如月愛海
品番:CMB-006
発売日:2021年8月25日
価格:1,500円(税抜)

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