『鬼滅の刃』柱合会議の前後で変化したものとは? 群像劇へのシフトを考察

『鬼滅の刃』「柱合会議」前後で変化したもの

 さて、話を『鬼滅の刃』に戻すと、前述の「柱合会議」とは、文字通り「柱」たちが「お館様」(=産屋敷家当主)のもとに集合して開く会議のことだが、第45話の段階では、約半数の「柱」が竈門兄妹のことを認めていない。

 簡単に書けば、それは、こういうことになるだろう(あくまでも以下は私見によるものである。読み手によっては、少々異なる印象を各キャラの言動に抱いているかもしれない)。

●「水柱」冨岡義勇……竈門兄妹のことを信じている。万が一、禰󠄀豆子が人を襲った場合は、腹を切る覚悟を決めている。

● 「蟲柱」胡蝶しのぶ……中立的な立場をとっているが、本心ではおそらく同情的。

●「恋柱」甘露寺蜜璃……同情的。

●「霞柱」時透無一郎……ほとんど関心がない。

●「岩柱」悲鳴嶼行冥……同情的ではあるが、炭治郎のことを、鬼に取り憑かれているから「殺して解き放ってあげよう」ともいっている。

●「炎柱」煉󠄁獄杏寿郎……私情はないが、鬼である禰󠄀豆子も、隊律違反である炭治郎も斬首すべきだと考えている。

●「音柱」宇髄天元……煉󠄁獄と同意見(本来は型破りなキャラだが、もともとは忍だったせいか、隊律を重んじる一面もあるようだ)。

●「蛇柱」伊黒小芭内……鬼である禰󠄀豆子に憎しみを抱いている。炭治郎のことも認めていない。

●「風柱」不死川実弥……伊黒とほぼ同じ考えだが、態度としてはより凶暴。

 この段階ですでに、ヴィジュアル面も含め、作者は見事に9人のキャラを立てているといっていいが、こうした竈門兄妹に対する(約半数の)「柱」たちの憎しみや不信感は、のちに炭治郎と禰󠄀豆子が命を賭して鬼と戦い、人々を守っていく姿を目の当たりにすることで、180度変わっていく。そこに読み手にとっての大きなカタルシスがあるのは間違いないだろう(特に物語の終盤で、伊黒が炭治郎のことを自分と同格の剣士として認め、不死川が禰󠄀豆子のことを妹のように扱う描写は感動的だ)。

 いずれにせよ、『鬼滅の刃』という物語は、第6巻を境にして、主人公の成長だけでなく、複数のキャラクターの想いをも描いたある種の群像劇へとシフトしていった。そして、そののち、第8巻で描かれた「炎柱」煉󠄁獄杏寿郎の熱き生き様が、この物語で作者が伝えようとしているテーマをより明確にしたといっても過言ではないのだが、そのことについてはまた、別の機会に書いてみたいと思う。

■書籍情報
『鬼滅の刃(6)』
吾峠呼世晴 著
定価:440円(税込)
出版社: 集英社

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