オアシズ 光浦靖子が明かす、留学決断の決め手 「ダメだったら職業を変えようと思ってますよ」
決断のきっかけは神のお告げ
――なぜ人に好かれないんだろうというネガティブなことを考えながらも、光浦さんは非常に前向きな行動をされてますよね。
光浦:自分に期待するのをやめたからですかね。期待していると絶対にこうしなきゃ、みたいなところにしがみついてしまうというか、決められた畑をもっと耕さなきゃという気持ちになるじゃないですか。けれど、期待するのをやめてみると、先ほど話したように収縮していく未来が見えてきたんです。頑張って何もない土地を掘り続けることになると気づいたからこそ、前を向いて進むほうがこの場所にずっと止まっているよりいいんじゃないかと思えるようになったんです。やっぱり自分に過剰な期待をしないことは大事ですよ。
――と同時に、他人に過剰な期待をしないことも大切ですよね。自分ができることを他人もできると決めつけないほうがいいというか。
光浦:それ、メンタル的にもよくないって聞きますよね。一生懸命、生きている人だから、他人にも自分ができることを期待してしまうのかもしれないですけど、そういう人には“あなたはとってもできる子だから、できない子に優しくしてあげなさい”って声をかけたいですね。例えば、他人の行いが気になる人って、仕事でもなんでも“できる”人なんですよね。だから、私にできることがなんでできないの?って思ってしまうんでしょうけど、あなたは人よりもすぐれた人なんだから優しくなりなさいって伝えたい。私、自分自身にも言い聞かせてますから。私も平気でぶつかってきた人とかに、すぐ苛立ってしまうんですよ。そういうとき、“私はすごくできちゃう子だから、道をお譲りしますよ”って心の中では思ってます。そうやって、自分を位置付けると気が楽になりますよ。いちいち怒っていたら疲れてしまいますからね。
――考え方の方向を少しだけでも変えるのは、すごく大切なことですね。
光浦:ヨットで世界一になった方とお話ししたとき、その方は「自分が言い出しっぺなんだからしょうがないや」って思うようにしてるって言っていたんです。ヨットで嵐に巻き込まれたとしても、自分が言い出したことなんだから仕方がないと考えるようにしてるって。あぁ、かっこいいなと思いましたね。
――前向きという点でいうと、光浦さんは何度も思い切りのいい決断を人生の中でされている印象があります。そういう勇気みたいなものは、どんなところから湧いてくるものですか?
光浦:勇気というより、私は3つの何かが重なったら運命だとか神のお告げだってすぐ考えてしまうんです。ノルマ意識とワクワク感と博打感みたいな。ダメになるかもしれないけど、やってみよう、みたいなことって、自分が欲しい情報にアンテナを張っていると集まってくるものじゃないですか。シンクロニシティだわ!って勝手に思ったりすることってあると思うんですけど、そういうことが3つか4つ重なったらゴーサインだと思うようにしてるんです。芸人になったときも20~30の理由が集まって、ある日、突然、神のお告げだ! よし、明日ネタ見せに行こうって決めて芸人になったんですよね。東京の大学を選んだ理由もそうでした。今回は久々ですよ。この世界に入って以来初めて神のお告げを感じて、よし、海外に住むぞって決意しました。とはいえ、たかだか1年休むだけですけどね。
――1年休むことが、大人になると実行できにくいといいますか。お金もかかることですし、投資したものの、今後に活かせるほど頑張れるんだろうか、そもそも自分に合っていることなんだろうかとか考え始めると、なかなか行動の一歩を踏み出せないですよね。光浦:確かに、同じポジションに戻れるかどうかを考えると踏み出せないところはありますよね。私はダメだったら職業を変えようと思ってますよ。もちろんテレビに出るのはやめないし、むしろ出たいし、ラジオにも出たいので、軸足を変えるっていうことですけど。そうなると、肩書きって何になるんでしょうね? コメンテーターになるかもしれないし、野菜ソムリエになるのかもしれない。手芸プランナー? プランナーということは実際、自分では作らないんですか?とかね。……ふふふ。そんな職業ありましたっけ?っていうようなカタカナいっぱいのふわっとした何かを並べておけば、なんとかなるだろうって。ダメだったときは、肩書きが多少インチキくさくなる。それくらいのことだと考えています。
■書籍情報
『50歳になりまして』
著者:光浦靖子
出版社:文藝春秋
価格:1,485円(税込)
発売中
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163913780