映画化で話題『子供はわかってあげない』が描くボーイミーツガール 作者・田島列島の遊び心に注目

『子供はわかってあげない』の遊び心

 大人の織り成す少し複雑な世界で、子どもとして息をする高校生の朔田と門司。シリアスな世界観が背景にあるからこそ、彼らの「子どもらしさ」はより際立つ。ゆえに門司が朔田を探し出すために「少年」から「男」になる瞬間や、感情の高鳴りを初めて恋と認識するタイミングなど、甘酸っぱい恋模様はみずみずしさを増して感じることができるのだ。

 『子供はわかってあげない』の世界で子どもらしさを見せるのは朔田や門司だけではない。作者である田島氏の存在だ。本作の世界には田島氏の「遊び心」がふんだんに描かれているのである。

 例えば第3話のサブタイトル「探偵は商店街にいる」は某探偵映画を彷彿とさせ、第14話のサブタイトル「あの日つけた技の名前を誰にも教えない。」は映画化もされたあのアニメの名前にそっくりだ。

 また朔田が父親を探す旅で通る道路には「パチンコ・スロット『火の車』」という破産しそうなお店の看板が設置されており、明大が降り立った駅には「風の谷の奈宇歯科」というジブリ作品に似た歯科医院の広告が掲示されている。

『子供はわかってあげない』下巻(講談社)

 極めつけは作中で登場する「カレー記念日」という、まるで俵万智の歌集のようなカレールーである。パッケージの裏に書かれた原材料名を見ると、小麦粉や食用油脂と共に「暗黒物質」や「S○AP細胞」、しまいには田島氏がこぼす嘆きもカレールーに練りこまれているのだ。本作には「カレー週間」というヱスビー食品のレトルトカレーに似たカレールーも登場するので、ぜひ原材料欄を見ていただきたい。

 初めて人を好きになる感情を覚えた懐かしさや、鉛筆で教科書に落書きをしていた頃のような遊び心。本作は忘れかけていた子どもの世界を蘇らせてくれる作品だ。この夏に公開を予定している映画『子供はわかってあげない』は大人になったわたしたちに、夏休みを迎えたときのワクワク感に似た胸騒ぎを与えてくれるに違いない。

■あんどうまこと(@andou_ryoubo)
フリーライターとして漫画等のコラムや書評を中心に執筆。寮母を務めている。

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