各マンガ賞に続々ノミネート、田島列島『水は海に向かって流れる』完結へ 悲劇にユーモアで向き合う作風を読む

各マンガ賞に続々ノミネート、田島列島『水は海に向かって流れる』完結へ 悲劇にユーモアで向き合う作風を読む

※本稿は、最終巻のネタバレが一部有ります。

 田島列島の漫画『水は海に向かって流れる』が完結した。

 『水は海に向かって流れる』は、2021年に実写映画が公開される話題作『子供はわかってあげない』の著者・田島列島の最新作。高校進学を機に叔父の暮らすシェアハウスに移り住むことになった直達(なおたつ)が、偶然にも父のかつての不倫相手の娘で26歳のOL・榊(さかき)さんと同じ家で暮らすことになるという物語だ。

 劇中では、家族に内緒で漫画家をしている直達の叔父をはじめ、女装の占い師、飄々とした大学教授といった個性豊かなシェアハウスの住人たちの日常に加えて、直達と榊さんが両親がかつて起こしたW不倫という問題に向き合っていく姿などが、キャラクター同士のコミカルな掛け合いを織り混ぜながら描いている。

 物語の一部ネタバレになってしまうが、最終巻では、榊さんが直達の父との不倫の末に家を出て行った母と10年ぶりに再会し、直達と榊さんの止まっていた時間が動き出すというストーリーが展開している。

 田島列島作品の大きな魅力の一つはユーモアだ。例えば上記の榊さんと母が再会する場面で、榊さんは再会直後に母に「(榊さんの下の名前である)千紗…?」と声をかけられると、咄嗟にサングラスをかけ、「NO!!アイムジャネット…住宅街に迷い込んだ観光客…」と汗をだらだら流しながら誤魔化そうとしたりする(ちなみに榊さんは日本人にしか見えないし、当然のように母にも正体は即座に看破されている)。

 田島作品ではこのように、いくらでも暗く重苦しくなるような、あるいは劇的に出来そうな場面でも、キャラクターの心理と矛盾しないような笑いを挿入してくる。「物語を過剰に悲劇的にしない」という作風は、前作から一貫している田島作品の特徴の一つと言えるだろう。

 だが、いわゆる「重たい」設定がないかというとそんなことはない。本作の「両親がW不倫していた」という設定はもちろん、前作『子供はわかってあげない』では「主人公の兄は性転換を機に祖父と絶縁状態にある探偵」、「ヒロインの実父は、妻と離婚した新興宗教の元教祖」という一見「重たい」設定が入っているし、劇中ではその問題にしっかりフォーカスを当てている。

 その上で、田島作品はこれらの問題をただただ悲劇的に描くのではなく、「大変なことが起きたけれど、さぁここからどうしたものか?」と、ユーモアを交えながらしっかりと問題と向き合っていく。そんな田島作品がどんな結末を迎えるのかぜひご自分の目で確かめてみてもらえればと思うが、おそらく多くの人が爽やかな感動に包まれるのではないかと思う。

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