高校生の日常描く『スキップとローファー』はなぜ大人に支持された? 清涼感あるノスタルジーの魅力
「このマンガがすごい!2020」オトコ編や「マンガ大賞2020」にランクインした『スキップとローファー』。石川県の小さな町から東京の進学校へ入学した「岩倉 美津未」を中心に高校生の群像が描かれる作品である。クラスで一目置かれる男の子「志摩 聡介」をはじめ美津未が様々な登場人物と関係を築きながら物語は進んでいく。
『スキップとローファー』は青年向け漫画雑誌「アフタヌーン」にて2018年より連載を開始した。同誌では高校生が主人公として描かれる作品も掲載されるが、多くはスポーツや恋愛などに物語の主軸が置かれている。本作の注目すべきところは登場人物の織り成す高校生活に焦点を当てた作品ながら、青年誌の読者から支持を得ている点である。
入学式や教室で行う自己紹介など、本作で描かれるのは学校生活における日常。自己紹介の練習に励み寝不足で目の下に深いクマができてしまうなど、作中のエピソードは共感を覚えつつ可笑しさも感じられる。
描かれる高校生活のユニークさもさることながら、特筆すべきは作者の高松氏が描く高校生活の解像度の高さである。それを象徴する一コマが入学したばかりの女の子6名で昼食を食べる場面だ。風呂敷をお弁当の下に広げて食べる人や、コンビニで購入したと思われるサンドウィッチを食べる人など、彼女たちの昼食には十人十色の個性が表れる。
キャラクターの個性がうかがえる光景やお互いの距離感がわかる会話など、解像度の高い描写から作品にリアリティが生まれる。まるで現実に存在するような高校生活の日常から、高校を卒業して大人になった読者は学生時代の懐かしさを感じることができるのであろう。