漫画家にとって“絵柄”はもっとも大事なものだ 『アクタージュ act-age』報道、「表紙」使用の是非を考える

『アクタージュ』報道のあり方を考察

連帯責任について

 また、最初に触れた、漫画家に連帯責任はあるのか、ないのか、という問題ですが、ツイートでは「漫画家には罪はない」と書きましたが、「少年漫画の共同執筆者のひとり」という意味では、連帯責任は「ある」と私も考えています。ただそれは、今回、「連載終了」、そして「コミックスの無期限の出荷・配信停止」という形で果たしたといっていいのではないでしょうか。

 その一方で、一部の人が主張している「連帯責任があるから、ニュースなどで漫画家が描いた絵が使われるのは仕方がない」という意見には賛同しかねます。この主張をしている人の多くは、ミュージシャンや俳優が不祥事を起こした際に、仲間のバンドメンバーや共演者たちが一緒に映っている映像や写真がニュースで流れることを例に挙げられていますが、それらのケースは、「誰が問題の人物なのか」を、みんなわかったうえで、複数の人が映った映像なり写真なりを見るわけです。ところが今回の『アクタージュ』のニュースのケースは、誰が不祥事を起こしたのかについて、不特定多数の人々が誤解してしまうのではないのか、と私はいっているのであり、そもそも比較の対象にはならないと思うのです。

 さて、最後になりましたが、漫画家の心配をする以前に、今回の件の最大の被害者が誰なのか、また、誰を最もケアすべきなのか、それは多くの方々同様、私も理解しているつもりです。そのうえで、漫画業界に長くいる人間のひとりとして、この件についてさらなる誤解や混乱を招いてはいけないと思い、投稿したのが冒頭に挙げたツイートでした。それくらい、漫画家にとって“自分の絵柄”というものは、「顔」や「命」に等しい大事なものなのです。

■島田一志
1969年生まれ。ライター、編集者。『九龍』元編集長。近年では小学館の『漫画家本』シリーズを企画。著書・共著に『ワルの漫画術』『漫画家、映画を語る。』『マンガの現在地!』などがある。Twitter

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