忌野清志郎の言葉はどこを抜き出してもカッコいいーー時代を越える名言に触れる『使ってはいけない言葉』

忌野清志郎の言葉はどこを抜き出してもカッコいいーー時代を越える名言に触れる『使ってはいけない言葉』

 書籍『使ってはいけない言葉』(百万年書房)は、忌野清志郎(2009年、58才で死去)のデビュー50周年プロジェクトの一環として出版された名言集。「キヨシローの残した古びないメッセージを、著作、出演雑誌、出演番組、ファンクラブ会報、ライブMCなどから網羅的に収集し、未来の読者のために残すプロジェクト」(帯に記載された文面)というのが、この本の趣旨だ。

どのページを開いてもカッコいい言葉がそこにある

 構成は、RCサクセションの“バンド本”『愛しあってるかい』(1981年)の企画・編集を手がけた山崎浩一。発行元の百万年書房の代表・北尾修一も雑誌編集者時代、清志郎と交流がある。つまり、清志郎に実際に接し、深い愛情を持っている人たちが作った本なので、「名言集なんてやめてくれ。清志郎はそんな本、望まないだろ」と反射的に思ってしまう面倒くさいオールド・ファンの私もしっかり楽しむことができた。

結局、信じられるのは自分の耳だけ。結果的に、それは正解だったと思う。

俺はそういうのは大っ嫌いなんだよね。昔無かったんだもん、コンセプトなんて言葉自体が。

 適当にバッとページを開けば、必ず「おお! カッコいい!」という言葉が飛び込んでくる。というか、この本に限らず、清志郎の著作やインタビューはすべてそうなのだ。試しに手元にある『十年ゴム消し』(清志郎が青年期に綴った詩、日記、イラストなどをまとめた著作)をめくってみると

愛想笑いなんて ほんとに嫌なもんだと 確信していたけれど おれたちがニヤニヤするのは ねえ ちょっといいものじゃないかしら。

『十年ゴム消し』文庫版(河出書房新社)表紙

 という一篇に出会える。彼が遺した歌もそうだが、どこを切り取っても、絶対にカッコよくて素敵なのである。『使ってはいけない言葉』の巻末には、すべての言葉の出典が載っているので、できれば原文や原曲にあたって、その背景を含めて味わってほしいと思う。

 “どこを抜き出してもカッコいい”清志郎の言葉の素晴らしさ、カッコ良さの根底にあるのは、生涯を通じて彼が示してきた圧倒的な確信だろう。ロックやソウルミュージックに日本語を乗せること、“僕の好きな先生”、“市営グランドの駐車場”、“原発”、“北朝鮮”について歌うこと、君が代をカバーすること、テレビの歌番組に出てカメラにチューイングガムをくっつけたり、いきなり“エムエム東京 腐ったラジオ”と歌うこと、そして、売れてない頃は複数の“便利女”に支えてもらっていたこともすべて、清志郎にとっては当たり前で普通のことだった(たぶん)。

 その発言や記した文字についても、清志郎は常に“自分はこう思う”ということだけを誰にも遠慮することなく放っていただけ。それがたまたま慣習や常識から外れていると、“衝撃を与えた”、“事故が起きた”と言われるわけだが、ファン(私です)にとってはどれも大した事件ではなく、「清志郎なら、そうするだろうな」と思うだけだったし、そのすべてが最高だった。もちろん、その姿勢そのもの、つまり、“誰にも遠慮することなく、好きなことを言って、好きなことをやればいい”ということ自体が最大のメッセージだったことは言うまでもない。本作『使ってはいけない言葉』を読んでーーこの本に載っている言葉の大半は知っていたがーー改めてそのことを実感した。

 もう一つ感じたのは、清志郎がこの世から去った現在において、彼が遺した言葉、そこに込められたメッセージを生かすも殺すも我々次第ということだ。東日本大震災のときの原発事故のとき、そして、現在の政治の状況に対して、「清志郎が生きていたら、どんな歌を歌ってくれただろう」などという言葉が飛び交うが、そんなことを言っても意味がないし、何も起こらない。当たり前だ、清志郎はもう死んでるんだから。そうではなくて、もし彼の言葉に何かを感じ、影響を受けたのだとしたら、自分で行動を起こすしかないと、激しい自戒の念を込めて思う。

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