志村けん、トップを生き抜いた国民的スターの“仕事哲学”とは? 月間ビジネス書ランキング1位『志村流』を読む
「人の鼻の差ぐらい先を読む」
志村けんファンど真ん中なら、『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』の「投稿ビデオコーナー」をリアルタイムで視ていた人も多いだろう。企画打ち合わせで、「素人の撮ったビデオを募集する」と提案した当初は、「まだビデオなんて普及してない」、「素人なんてレベルが低い」とスタッフ全員が否定的だったらしい。
しかし、コーナーの人気は国内のみならず、TBSがアメリカのテレビ局にアイデアを売り全米で反響を呼んだ。YouTuberが職業として認知される現在では、面白いコンテンツにプロも素人も関係ないのは当然だが、「これから皆にウケることなんて、難しく考えず、誰もが思いつきそうなことを少しだけ早く現実化させればいい」との言葉は、読者の背中も押してくれるだろう。
「礼儀は永遠に不滅です」
先輩の芸能人にコントで水をかけるときも、いかにゲストを目立たせるかを考える。礼儀の問題は新しい、古いじゃない。芸能界だからではなく、人間社会のルールだと諭されると、世代を問わず支持され、業界内でも尊敬を集めると言われるのも納得だ。
ただし、常識は不変ではないとも語っている。「グループサウンズ」が「GS」で通じなくとも、「イチゴ大福」が定番になり「あんこ」は古臭いと避ける人がいようとも、「オツムの回転には柔軟性を持たせようぜ」と、昭和から平成、令和とトップを生き抜いた国民的スターに言われたら、これもまたナルホドと納得だ。
コロナにより常識も変わってしまった。時代を超えた人気にも、惜しまれつつ亡くなってしまった「人間・志村けん」のエッセンスに、変わること、変わらないものを考えながら学んでみるのはいかがだろうか。
(文=MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店・社会書担当 中田英志郎)