子ども向け自己啓発書、コロナ禍で13万部超えヒットも “これからの生き方”学べる本の需要高まる
ここ5年ほどで一般化した「子ども向け自己啓発書」
2015年にシリーズが始まった『学校では教えてくれない大切なこと』(旺文社)、2016年3月に発売された『こども孫子の兵法』から始まる斎藤孝(明治大学文学部教授)の「名著こども訳」シリーズ(日本図書センター)などをはしりとして、「子ども向け実用書」ないし「子ども向け自己啓発書」が近年盛り上がりを見せ、書店でも棚ができてきている。
『学校では教えてくれない大切なこと』は「整理整頓」や「物の流れ」をテーマにするなど、自己啓発というより実用書と呼んだ方がいい内容が多いが、日本図書センターの「名著こども訳」シリーズやそれのベスト盤的内容の『きみを強くする30のことば 偉人に学ぶ生き方のヒント』、為末大『生き抜くチカラ』、高濱正伸監修『メシが食える大人になる!よのなかルールブック』などは、子どもに対して生き方を説き、考えさせる自己啓発的な要素が強い。
なぜこうした本が求められるようになってきたのか?
偉人の伝記を読むより手っ取り早く、具体的に生き方を学べる
子ども向け自己啓発書の対象読者は、日本図書センターの『おやくそくえほん』のように一部は低学年向けもあるが、ほとんどのものは下は10歳、小学校中高学年から読める内容で、上は高校生くらいまでが対象になっている。
都市部では中学受験の塾通いが小3終わりの春休み頃から始まるが、早ければそのくらいの年齢から将来を見据えて勉強してほしいと思う親が増える、というのが一因だろう。「将来、こうなりたいから今これをやる」という動機付けがうまくいかなければ、勉強にしろスポーツの練習にしろ、必死にはならない。
全国学校図書館協議会が毎年行っている「学校読書調査」を見ると、小4になると男子は「日本の歴史」や「三国志」、あるいは織田信長などの伝記をよく読み、女子はヘレン・ケラー、ナイチンゲール、アンネ・フランクが長らく定番になっている。子どもが偉人の物語や歴史を通じて何かを学び取る、というのは今も変わっていない。
しかし、伝記から『何か』は学べるだろうが、何が学べるかは未知数だ。もっと即物的、直接的に自分の子どもに「これからの時代の生き方を学んでほしい」「将来のキャリアを見越した情報をインプットしてほしい」「大人になったときの姿から逆算して今を過ごしてほしい」と願う親も多いであろうことは想像に難くない。
子どもに本を買い与えるのは大人だ。その大人のニーズを反映するかたちで「子ども向け自己啓発書」は急速に広まっている。