人の目は透視や予知ができる? SNSで話題『ひとの目、驚異の進化』の理屈を解説
こういうことの何がおもしろいのか?
ではなんでこんなことを言っている人/本が注目されているのか?
理由はいくつもあるだろうが、ひとつには、たとえば映像やゲームといった視覚文化の研究や批評、実作に使える、斬新な考え方だからだ(「斬新」と言っても親本の原著は2009年刊、翻訳親本にしたって2012年刊ではあるものの)。
もちろん、研究や批評、実作以外にもテクノロジーを使ったプロダクトにも使えるだろう――実際、本人が自分の研究を元にしたスマートグラス的なものを開発している。
もうひとつは、何かに応用しなくても、考え方自体にSFに近い娯楽性と思弁性があるからだろう。たとえば「人類がつくりだした文字はすべて自然物に似ているし、あらゆる文字言語には共通の特徴がある」といったことも言っていて、本書は「人間がつくりだした文字の本質とは?」「視覚芸術とは?」ひいては「人類とは?」といったことまで想像を膨らませるきっかけを与えてくれる。
といっても人類史の本とかではないので壮大な話を期待して抱いて読むと肩すかしを食らうとは思うが、身近な事例や素朴な疑問からびっくりするような考えに行き着く手腕はたしかにおもしろかった。
■飯田一史
取材・調査・執筆業。出版社にてカルチャー誌、小説の編集者を経て独立。コンテンツビジネスや出版産業、ネット文化、最近は児童書市場や読書推進施策に関心がある。著作に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』『ウェブ小説の衝撃』など。出版業界紙「新文化」にて「子どもの本が売れる理由 知られざるFACT」(https://www.shinbunka.co.jp/rensai/kodomonohonlog.htm)、小説誌「小説すばる」にウェブ小説時評「書を捨てよ、ウェブへ出よう」連載中。グロービスMBA。
■書籍情報
『ひとの目、驚異の進化』
マーク チャンギージー 著
出版社:早川書房
価格:¥1,166(税込)