TETORAにしか生み出せない予測不能な熱狂 信念でぶつかり合い“デッカいTETORA”になった『エピソード0ツアー』

「綺麗なライブにしたくない!」
そう叫ぶ上野羽有音(Vo/Gt)は、ギターの弦が切れても止まらない。ガムシャラにギターを掻き鳴らす上野に、いのり(Ba/Cho)とミユキ(Dr/Cho)も剥き出しの音で応戦し、3人はそれぞれの衝動をぶつけ合っていた。TETORAの全国ワンマンツアー『TETORA エピソード0ツアー』、5月14日に開催された東京・渋谷CLUB QUATTRO公演での一幕である。

ライブは、上野の弾き語りから始まった。彼女が歌うのは、TETORAを目掛けてこの場所にやってきた観客へのとっておきのメッセージ。それぞれの生活のなかでTETORAの音楽を聴き続けてきた一人ひとりに向けるように、上野は心を込めて歌っていた。その言葉が1曲目のタイトルとも呼応していると気づいた観客が、順に表情を輝かせる。やがて、いのり、ミユキが合流すると、うねるベースと力強いキックが聴く人の胸を揺さぶった。フロアは最初から熱量が高かったが、上野が「後ろでくすぶってるヤツいるんやったら、掻き分けて前来い!」と投げかけると、前方に向かう人の波が生まれる。さらに上野はマイクを離れ、シンガロングを促す。「前半やからって気緩むな!」――まだ序盤とは思えないほど、会場の熱気は高まっていた。


最初の4曲が終わり演奏が一旦止むと、フロアから「ミユキちゃん、おかえり!」という声が飛ぶ。怪我のため約2週間ライブを欠場し、この日から復帰したミユキは、その声援に「ただいま!」と笑顔で応えた。ここで上野が、「無理して3人でひとつのTETORAになるつもりは全然なくて。3人それぞれがTETORAである。それをモットーに私たちはやらせてもらってます」と宣言する。TETORAが大切にしているのは、自分がカッコいいと信じる生き様を全うすること。それは3人が足並みを揃えるのではなく、それぞれが信念を燃やし続けることで成立する。個々の強さがぶつかり合い、重なり合うことで生まれる予測不能な熱量。それこそがTETORAというバンドの核心なのだと、この日上野は改めて言葉にしてみせた。
そして〈毎晩 革命イヴ/やらなきゃな時も/ハシャいでる時も/兆しだけは見逃さないように〉と歌う「革命イヴ」が、ライブハウスで生きる3人のアンセムとして響いた。「革命イヴ」も収録された最新シングル『夢中霧中』には、自分がカッコいいと信じる生き様も、誰かを想う恋心も、等しく“心の中の宝物”として鳴らすTETORAの姿勢が表れている。セットリスト中盤で披露された恋のバラード群もまた、まっすぐに響いた。

〈来月24日の予定も知らないのに/あなたでしあわせを/知りたいと思うんです〉という歌詞が胸に刺さる「11月」。想いの非対称さを取り残されたペットボトルに喩えた「知らん顔」。そして、行き場のない悲しみを剥き出しのまま歌う「今日くらいは」。上野は「どれだけ人にやめとけって言われても、TETORAの歌詞なんかが好きな人のその恋が、どうか実りますように」と願うように曲を届ける。同時に、「好きなところだけを見て君のことを好きになってないよ。それがしんどい! 沼りすぎるとしんどい!」と感情を爆発させる。TETORAのラブソングが胸を打つのは、不器用で矛盾だらけの感情を取り繕わずに鳴らしているからだろう。
上野はフロアに浮かぶ様々な表情を見つめながら、「鼻すすってる子も、楽しそうな子も見えてるよ」と語り掛ける。そして「悲しい時とか、怒ってる時とか、そういう気持ちの時は、答えをすぐ急いで出さなくていいからね。ここに来たら頭良くても悪くても、性格良くても悪くても、全員一緒。ここに来た、それだけがこの中にある事実」と続け、「夢中霧中」へと繋げた。ダイナミックに広がるサウンドとステージ上のミラーボールが放つ光が、ライブハウス全体を包み込んでいく。この場所に持ち寄られた感情をまるごと肯定するような響きだ。歌詞に〈宮下パーク〉が登場するこの曲が、渋谷CLUB QUATTROで鳴らされるのもまた格別。上野が「この曲やるたびに日に日に上がる拳が増えて、私たちはそれにグッときてます」と語っていた通り、フロアから突き上がる拳の一つひとつに、それぞれが自分の感性を信じ、この音楽とともに積み重ねてきた時間が宿っていた。


ライブ後半では、シングルの中でも屈指のハードナンバー「撞着的関係」が炸裂。鋭利なサウンドで一気にラストスパートを駆けていく。観客同士が肩をぶつけ合いながら拳を突き上げる熱狂のなか、上野は「褒められるか、怒られないかどうかで選ぶと数年後絶対に後悔する。ただ自分の納得することをしいや」と、自分自身の衝動を信じ抜くことの大切さを語った。そして「今、その状態で(ライブ)できてる。ありがとうございます」と伝えた。その言葉には、自分の感性や衝動を信じ、この場所に集まった人たちへの信頼が滲んでいた。
さらに「3人それぞれがTETORA! 裏方も、同じ魂持ってたらそれはTETORA!」「みんなはどう? 同じ気持ちでやってたらそれはTETORA! クアトロでデッカいTETORAやろう!」という言葉が放たれると、「イーストヒルズ」では大合唱が広がった。ステージとフロアの境界はもはやほとんどない。ライブハウス全体が巨大なひとつの熱狂と化すなか、3人の演奏はさらに熱を帯びていき、フロアからは絶え間なく歌声と拳が上がり続けた。

「もしも今までのTETORAが、全部プロローグやったらどうしますか?」
そんなドキッとする言葉を残して3人はステージをあとにした。その一言はいったい何を意味するのか――この先にもっとすごいTETORAが待っているという予告なのかもしれないし、毎日が始まりだというライブバンドとしての宣言なのかもしれない。タオルで汗を拭いながら去っていく3人の笑顔からは、充実感が伝わってきた。

◾️ライブ情報
『TETORA pre.「KAKUSEI CLUB 」』
2026年8月2日(日)開催 OPEN 15:00/START 16:00
会場:大阪 吹田市 大和大学内 大和アリーナ
チケット:adv. スタンディング ¥6,500/指定席 ¥7,500
出演:ハルカミライ/SPARK!!SOUND!!SHOW!!/TETORA


























