TETORAがライブで示す言葉をダイレクトに届けることの大切さ  満員のオーディエンスと共鳴した“事件みたいな夜”

TETORA、“事件みたいな”ゲリラワンマン

 2月13日に東京・渋谷Spotify O-Crestにて、TETORAのワンマン公演『ゲリラワンマン for the future』が開催された。3月18日に最新CD『夢中霧中』をリリースする彼女たちからサプライズ感満載に告知されたゲリラ公演だったが、この日は見事ソールドアウト。TETORAが仕掛けることの面白さにワクワクする気持ちを抱えながらライブの始まりを待つオーディエンスのエネルギーで満ちた会場は、すでに熱かった。

TETORA ライブ写真
上野羽有音

 そんなステージに登場した上野羽有音(Vo/Gt)、いのり(Ba)、ミユキ(Dr)は、ドラム前で呼吸を合わせ、「はっちゃかめっちゃかで宜しくお願いします!」と宣誓し、「わざわざ」でライブをスタートさせた。「一緒に歌って!」と合図をして続けた「抱きしめてるもの」では、冒頭から大シンガロングが発生! 楽器の音が止まって、オーディエンスのシンガロングだけが会場に響く。ライブの超序盤のこのワンシーンを観るだけでも、彼女たちの歌は、もう彼女たちだけのものではないのだとひしと感じさせられた。自分が大好きで大事にしているものは、自分が見失わないように言葉にしていこう――この楽曲に込められたそんな想いは、バンドもオーディエンスも一緒になって、ライブハウスで実際に声に出していくことで完成する。「ライブハウスに辿り着いてくれてありがとうございます!」と叫んだ上野の想いも相まって、その光景のパワーと美しさにグッと胸を掴まれた。会場全体で高まったそんなバイブスを後押しするように、いのりとミユキが軽快かつ躍動的にリズムを刻んでいく。

TETORA ライブ写真
いのり
TETORA ライブ写真
ミユキ

 MCで『夢中霧中』のリリースについて話す中、TETORAがサブスクリプションや音楽配信サービスに加入していないことについても触れていた。その理由として「サブスクをやっていないこと自体がかっこいいとは思っていなくて、自分自身がかっこいいと思える事をやっているバンドが、かっこいいんだと思うんです。TETORAはこれを今、面白がって、かっこいいと思って、自分達が納得してやっています。サブスクも色んな事も、面白いと心から思った時はちゃんとやらせてもらうから。自分勝手なTETORAに付き合ってくれてありがとうございます」と述べた。それは、期間限定でCDショップにて先行視聴の機会を設けたり、リリースに向けたサプライズとして、記念配信などではなく実際にこうしてライブハウスでのライブを行っていたりするTETORAだからこその説得力のある理由だと思えた。そんなMCの後に届けられたのは、初披露の新曲「夢中霧中」。人でも物でも何かでも、自分が夢中になれるくらいの出会いがあったのならば、最大級に慈しみ、愛していこう。その決意と素晴らしさを宿した歌を、声が掠れることも厭わずに感情込めて歌い、鳴らし上げる3人の姿はとびきり輝いていた。

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 アップテンポの「7月」、「9月」を経て、「友達、以上」ではミドルテンポに乗って秘める恋心を歌い上げた。友達として傍に居られることを優先して、恋心を悟られないよう振る舞う。そんな自分が少し苦しくなるシチュエーションにおける心理描写を丁寧に描きあげた楽曲を、自分の話のように深く静かに聴き入るオーディエンスによってフロアの空気感もガラリと変わった。先述したような、「TETORAの曲は、もうTETORAのものだけではない」という発見は、続く「今日くらいは」や「今さらわかるな」でも強く感じた。甘酸っぱいと呼ぶにはほろ苦く、若気の至りと言うには苦しく真面目な感情に寄り添ってくれる彼女たちの音楽が、聴き手の励みに繋がっているのだと思えた。そうした聴き手の想いをもうひと押しするように「不安になる日があってもいい」と告げて届けられた「ネコナマズ」と「知らん顔」が、優しく響いた。

TETORA ライブ写真

TETORA ライブ写真

TETORA ライブ写真

 「シンプルに楽しい!」と無垢な感想を告げつつ、「TETORAのライブで心を充電して溢れたのが涙でも、笑顔でも、拳でもいいです。自分の気持ちが誰で溢れるのかをしっかりと再確認して、それを心で大事にしてください。ゲリラってだけで事件みたいな日って思うかもしれないですけど、しっかりとライブで事件みたいな日にさせてもらいます」と決意を改めたここからの流れは怒涛だった。赤い照明の下で放たれた「本音」で拳が一面に上がり、久々に演奏したという彼女たちの初心を震わせる「これからも」、「バカ」や「嘘ばっかり」を間髪を入れずに連発! 「時代遅れと言われるかもしれんけど、TETORA は根性! 努力! やる気! そして夢中! 人生そういうものも一つくらいはあっても良いんじゃないですか?」という言葉通り、熱と汗と昂りをこれでもかと誘引した「素直」や「10月」の景色はまさに“はっちゃかめっちゃか”だった。自由にうねるベースラインに体を委ね、軽快かつ重厚なドラムのビートに心を預ければ、ずっとドキドキとワクワクが止まらない。上野は「色んな先輩から、ライブハウスの中は不快指数が高い方がかっこいいライブの証拠だって、言葉でも背中でもたくさん教えてもらいました。いい意味でトラウマになって帰ってください」と話していたが、その言葉の通り、テンションに任せてもみくちゃになったオーディエンスの顔は見渡す限りキラキラしていた。

TETORA ライブ写真

 そんな高揚感にまみれたライブのラストセクションにじっくりと届けられたのは「2月」、そして堂々とした「Loser for the future」だった。「2月」の歌詞の中に〈ちゃんと伝えよう/「ありがとね」〉とあるが、TETORAはライブでも人への感謝の言葉を多く伝えている。言葉にすることの大切さ、それを届けようとすることの大事さを知っている彼女たちだからこそ、多くの人が感銘を受け、共鳴していくのだろう。そうしたTETORAの真っ直ぐな姿勢を真摯に感じることができるフィナーレだった。

 アンコールでは、翌日に控えたバレンタインデーに向けて頑張る女の子にエールを贈りつつ、「正直者だな心拍数」と「き」を届け、さらに熱望されたダブルアンコールでは「I'm sad」、「い」を投下し、フロアの熱気を大爆発させた。最後の最後まで、ライブハウスへの敬意と人と音楽への愛を「これでもか!」と感じさせる、事件みたいな夜だった。

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