ASIAN KUNG-FU GENERATION、HEY-SMITH、KANA-BOON…フェスで存在感を放ち続ける3バンドの“周年への軌跡”
アーティストにとってひとつの節目となるアニバーサリーイヤー。周年を記念したライブが行なわれることも多く、2026年もまた、さまざまなバンドが節目を迎える一年となる。そこで本稿では、2026年にアニバーサリーイヤーを迎えるバンドの中から、フェスシーンにおいて確かな実績と信頼を重ね、大きな存在感を残してきた3バンドをピックアップ。数多くのフェスが乱立する中で、彼らはどのように歩み、その“らしさ”を培ってきたのかを振り返っていきたい。
結成30周年を迎えるASIAN KUNG-FU GENERATION
1組目は、ASIAN KUNG-FU GENERATION。1996年に横浜の関東学院大学の音楽サークルで結成され、今年結成30周年を迎えるその歩みは、日本のオルタナティブロックがインディーからメインストリームへ広がっていく歴史と重なる。SUPERCARやくるり、NUMBER GIRLらが登場した90年代後半を経て、ASIAN KUNG-FU GENERATIONが登場。フロントマンの後藤正文(Vo/G)が高校から大学時代にかけて、Oasis、ベック、Teenage Fanclubなどに傾倒し、作曲においてはノエル・ギャラガーの影響を大きく受けていたと公言しているように、海外のロックにルーツを持つサウンドでバンドシーンに新しい風を吹かせた(※1)。それでありながら、マニアックになりすぎることはなく、広いリスナーにその音楽を届けた点で、ASIAN KUNG-FU GENERATIONは特異な存在だ。
具体的な楽曲を挙げると、「リライト」はフェスのアンセムと言ってもいいほどに、世代を超えて熱狂を生み出す楽曲になっているし、映画『ソラニン』のメインテーマとしても知られる「ソラニン」は洗練された切ないイントロの音色だけで歓声が上がる代表曲になった。また、アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』(TOKYO MXほか)で結束バンドがカバーしたことで「転がる岩、君に朝が降る」が再び脚光を浴びるなど、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの音楽はさまざまなカルチャーと共創しながら幅広い世代に影響を与えていったと言えるだろう。
そんなASIAN KUNG-FU GENERATIONは今やフェスに引っ張りだこであり、メインステージのトリを務めることも多い。長年主催してきた『NANO-MUGEN FES.』は、彼らのスタンスの象徴だ。出演者は国内に限らず、BECKやWeezerといった名だたる海外のアーティスト/バンドを積極的に招聘し、自分たちが信じる“良い音楽”を意欲的に日本のリスナーに届けてきた点からも明らかだろう。2025年の同フェスでは、アメリカ、イギリス、インドネシアからもアクトが集結し、よりグローバルに展開してみせた。今後もさまざまな国籍のバンドが集う交差点のような立ち位置で、その存在感を発揮すると思われる。
HEY-SMITH、『ハジマザ』が放つ独自の熱気
2組目は、2006年に大阪府で結成され、今年結成20周年を迎えるHEY-SMITH。メロディックパンクやスカパンクにルーツを持つ彼らの歩みは、DIY精神と圧倒的な現場主義の積み重ねであった。ホーンセクションを加えた編成が生む音圧とグルーヴは、どんなに大きな会場であっても一瞬でライブハウスに変えてしまう力を持っている。研ぎ澄まされたビートメイクとパンチ力のあるサウンドは、理屈抜きで体を動かしたくなるような切れ味があるのだ。楽曲でいうと、「Endless Sorrow」のようなライブで人気の高い曲の多くは、パンキッシュな高揚感に溢れており、その根本は近年の楽曲でも変わっていない。また、「Say My Name」はTVアニメ『東京リベンジャーズ』天竺編(MBSほか)エンディング主題歌で、HEY-SMITHらしいソリッドなサウンドに、タイアップならではのメリハリとキャッチーさを加え、幅広い層に届いた。YUJI(Ba/vo)の突き抜けるようなハイトーンボーカルも大きな存在感を放っている。
年間100本近くのライブをこなすHEY-SMITHだが、フロントマンである猪狩秀平(Gt/Vo)のオーガナイザーとしての信頼感も厚く、常にアンテナを潜らせ、音楽に対するリスペクトが深い点も、HEY-SMITHがシーンの中で存在感を示している理由のひとつだと感じる。彼らが主催する『OSAKA HAZIKETEMAZARE FESTIVAL』、通称『ハジマザ』は、まさにHEY-SMITHだからこそのカルチャーが凝縮したライブイベントだ。パンク、ラウド、スカといったジャンルにルーツを持つバンドが集い、この日だからこその自由な音楽体験が次々に作り出されていく。フェスの数が増えた現在、『ハジマザ』が独自の熱気を持ちながら継続的に開催されているのは、HEY-SMITHが自身のカルチャーに愛と誇りをもって活動してきたからこそであり、ブレることない積み上げが土台としてあるからなのだろう。
新たな快進撃の予感に期待が高まるKANA-BOON
3組目は、2006年に大阪の高校の軽音楽部で結成されたKANA-BOON。その後、堺市の三国ヶ丘FUZZを拠点に活動を本格化させ、2013年にメジャーデビュー。バンドのインディーズ時代を振り返ると、下北沢でもアメ村でも、KANA-BOONの存在感は大きかった。しかし、KANA-BOONのバンドの歴史は、必ずしも順風満帆ではなかった。メンバーの変動など、さまざまな困難に直面した時期もあったからだ。ただ、形を変えながらもそれらを乗り越え続けるタフさがフロントマンの谷口鮪(Vo/Gt)にはある。2026年1月からは新メンバーを加えた4人体制での活動をスタート。新たな快進撃の予感に期待が高まっている。
そんなKANA-BOONは、結成してからの20年間、さまざまな活躍をしてきた。2000年代から2010年代、そして現在に至るまで、ロックフェスはそのあり方と役割が変わっていったが、その変化の中でKANA-BOONの存在感は大きいだろう。具体的に楽曲を挙げると、「ないものねだり」には、四つ打ちダンスビートと中毒性のあるメロディによるセンセーショナルなインパクトがあり、フェス全体の空気を大きく変えるほどのエネルギーを持っている。また、「シルエット」のように口ずさみやすいメロディを際立たせたポップな楽曲もあれば、「フルドライブ」のようにアグレッシブなロックサウンドを展開する楽曲もある。さらには、谷口のストレートで伸びやかなボーカルと、シンプルながらも緻密なサウンド構成でファンを魅了することも多い。直感的に“のれる”楽曲になっていることで、フェスシーンでもKANA-BOONの存在感は大きいものになったのだと思われる。
2010年代のフェスシーンに大きな影響を与えたKANA-BOONが、さまざまなフェーズを経て作り出す新たな物語の始まりに期待が高まる。
広い層にも届く代表曲を持っていたり、主催フェスを行なっていたり、3バンドそれぞれがシーンの中で独自のやり方を貫き、自分たちのカルチャーを根付かせ、今なお不動の存在感を放っている。これまでの軌跡の素晴らしさを改めて実感しつつ、節目となるこの一年、それぞれのバンドの活躍を楽しみにしたい。
※1:https://natalie.mu/music/column/375597























