FACT、“完全無欠のロックバンド”として飾ったクライマックス HEY-SMITHと伝説を更新した最後の東京公演

昨年12月8日、幕張メッセ 国際展示場9-11ホールで開催されたJMS主催ライブイベント『REDLINE ALL THE FINAL』にて解散から9年を経て復活を果たしたFACT。その後、2025年6月から全国ツアー『FACT IS LIFE TOUR 2025』を開催し、同年10月5日に幕張メッセ 国際展示場9-11ホールで行われる自主企画イベント『ROCK-O-RAMA-THE END』にて正真正銘のラストライブを行うことを発表し、多くのライブキッズを驚かせた。2015年の“最初の解散”以前に彼らのステージを何度も目撃してきたが、YouTubeで公開された『REDLINE ALL THE FINAL』での彼らのステージ(ライブの幕開けを飾った「a fact of life」)での多くの若いオーディエンスが歓喜する場面を目にして、この約10年でいかにFACTというバンドが伝説となり神格化されたかを実感した。
今回筆者は『FACT IS LIFE TOUR 2025』のうち、9月15日に豊洲PITで行われた東京公演DAY2を観覧。この日は盟友・HEY-SMITHをゲストアクトに迎え、観客の想像を超える熱いステージが展開された。
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HEY-SMITH、仲間のラストツアーでド派手にエール
トップバッターはオーディエンスのクラップに導かれるようにステージに登場したHEY-SMITH。FACT Tシャツを着用した猪狩秀平(Vo/Gt)を筆頭に、冒頭からエネルギッシュな演奏と「Dandadan」や「Say My Name」などの連発で、フロアの熱気を急加速させる。そんな彼らのステージに対して、オーディエンスもステージダイブやクラウドサーフなどで応戦。早くもクライマックスのような盛り上がりを見せた。その一方で、猪狩が「最初に言わせてください。FACT、復活してくれてありがとう。そして解散すんの、バカヤロー(笑)!」と叫んで場を和ます場面も。また自身のUSツアー中、FACTもアメリカでレコーディングを行っていたことで合流し、急速に仲を深めたエピソードも明かされる。
そんな仲間のラストツアーに対して「ド派手にいくしかないでしょ? ド派手にいくために、今日は激しい曲しか持ってきてないから。完全燃焼でいくぞ!」と宣言すると、「Drug Free Japan」でさらに勢いが加速。さらに「FACTに1曲送るぜ」と、 FACTに触発されて生まれた「Download Me If You Can」をドロップすると、メインアクトを食わんばかりの白熱ぶりを見せる。そして、「今からFACTを観るのが楽しみで仕方ないぜ!」と喜びのメッセージを残して約40分におよぶステージを終えた。
FACT、フィナーレ級の熱狂を何度ももたらした“ポジティブな轟音”
いよいよこの日のメインアクト、FACTの出番だ。仰々しいイントロダクションもなく、場内にBGMが流れ続ける中メンバーがぞろぞろとステージ上に姿を現すと、フロアの熱気も急加速する。Hiro(Vo)を除く5人がセッションを始め、最後にHiroがステージに登場するとEiji(Dr)が繰り出すタイトなビートに乗せて、ライブは「slip of the lip」からスタート。Kazuki(Gt)やTakahiro(Gt)、Adam(Gt)が煌びやかさと鋭さを兼ね備えたギターリフ、Eijiとともにバンドの要となるグルーヴを作り上げるTomohiro(Ba)のベースなどがひとつの塊となって客席に向けて放たれると、これに負けじとオーディエンスもダイブやクラウドサーフなど思い思いの形でFACTが生み出す“ポジティブな轟音”を満喫していく。

Hiroが「思いっきり楽しんで帰ってくれ!」と告げると、ライブはそのまま「los angeles」「purple eyes」とメジャーデビューアルバム『FACT』(2009年)からの楽曲を連発。観客のシンガロングも加わり会場の一体感がより高まっていくと、「the shadow of envy」ではHiroの「来いよ!」の煽りを受け、早くもクライマックスのような盛り上がりを見せた。


冒頭4曲を一気に畳み掛けると、Hiroは「バンド史上初めて、便所でションベンしてるときにライブが始まりました。やめてください(笑)」とライブ冒頭の登場シーンに触れ、会場の笑いを誘う。続けて、HEY-SMITHへ労いと感謝の言葉を送ると、「すげえ昔の曲をやらせてください」の言葉に続いて「start from here」「Deviation」「Manic」とインディーズ時代の楽曲を連発。前者は1stミニアルバム『The fine day never last』(2004年)、後者2曲はNature LivingとのスプリットEP『This day, this means』(2005年)収録と、サブスクなどで聴くことができない上に、この場にいる者の多くがリアルタイムで触れていないのではないかと思わしきナンバーばかりだったが、フロアは冒頭4曲以上の盛り上がりを見せることに。こうした現実を目の当たりにして、Hiroは「どんだけ知ってんの、昔の曲!」と驚いた表情を浮かべるが、一方でKazukiは「『ヤベえ曲持ってる!』ってようやく気づいた? でも俺ら、もうじき解散しちゃうから(笑)」と口にして場を和ませる。


そして「まだまだいい曲、いっぱいあるから」という言葉に続いて始まったのが、FACTにとってラストアルバムとなった『KTHEAT』(2015年)からのミドルナンバー「the way down」。ダークでヘヴィな音像ながらもキャッチーなフレーズが含まれたこの曲では、会場中に観客の歌声が轟くことに。かと思えば曲中、AdamがROSÉ(BLACKPINK)&ブルーノ・マーズ「APT.」の名フレーズを歌い始めるなどフロアにはより自由な空気が充満していき、以降もHiroとAdamのツインボーカルが絡み合うカオティックな「worm」や、観客とのコール&レスポンスが心地よく響く「ape」など、バラエティに富んだ楽曲が立て続けに披露された。


キラキラしたギターフレーズが印象的な「FOSS」ではフロアにいくつものラブドールが投げ込まれ、ダイバーやサーファーに混じって観客の頭上を飛び交う場面も。そして、Eijiのボーカルから始まる「disclosure」でライブも終盤戦に入ると、フロアのカオスぶりはより加速していく。そんな中、オーディエンスからバンドに向けて「ありがとう!」という言葉が届けられると、Hiroは「今言ってくれた『ありがとう』って言葉が素直に嬉しいです。この日が来ることをずっと待っていたし、今日ここで東京の最後を迎えることができて本当に幸せです」と改めて感謝の言葉を告げた。

続けて「ずっと続けているバンドがほかにもたくさんいます。たくさんある音楽の中で俺たちを選んでくれてありがとう」と語ると、バンドはそのまま「sunset」へとなだれ込む。バンドとして真のクライマックスへと向かっていく今のFACTならではの開放感が伝わるこの曲は、まさに至福の瞬間と言っても過言ではないだろう。そんなキッズたちの笑顔を前に、Hiroはエネルギーに満ちた轟音の壁を背にしながら「死ぬまでこの日のことを一度も忘れることはないと思う。本当にありがとう。もし幕張に来るってヤツがいたら、思いっきり笑って、ずっとFACTってバンドがいたってことを伝え続けてくれ」と伝えていく。そして、「次の曲で最後だ。全員思いきりかかってこい!」を合図にラストナンバー「a fact of life」が始まると、フロアはこの日一番の熱狂ぶりを見せる。すべての体力を放出せんばかりにアグレッシブな動きを見せるメンバーと、全力のシンガロングやダイブ&サーフでそれに応えるオーディエンス。さらに、ステージ袖から突如飛び出しフロアへダイブした猪狩をはじめとするHEY-SMITHの面々も加わり、FACT最後の東京公演は伝説の名にふさわしいフィナーレを迎えた。


本稿が掲載される頃には『FACT IS LIFE TOUR 2025』大阪2公演もすでに終了し、残すステージは『ROCK-O-RAMA-THE END』のみとなったFACT。正直、今回のライブを観る前は思い出補正も加わって良い思い出になるんだろうなと考えていたが、そんな浅はかな思いはFACTのステージが始まってすぐに打ち砕かれた。約10年間に個々が積み重ねてきた経験が確かなものとして打ち出され、それが足し算ではなく掛け算として反映されている。それくらい今のFACTはノスタルジーなんて必要のない、完全無欠のロックバンドなのだ。
『FACT IS LIFE TOUR 2025』を経て『ROCK-O-RAMA-THE END』で正真正銘の最後を迎えるFACTの伝説は、ここからさらに上書きされていくことになることだろう。だからこそ、彼らの音楽に一度でも触れたことがある人は『ROCK-O-RAMA-THE END』でのラストステージを絶対に見逃さないでほしい。そして、新たな伝説の生き証人となり、FACTのことを未来へと語り継いでいってほしい……そう願っている。
◾️FACTセットリスト
01. slip of the lip
02. los angeles
03. purple eyes
04. the shadow of envy
05. start from here
06. Deviation
07. Manic
08. error
09. the way down
10. worm
11. drag
12. ape
13. FOSS
14. tonight
15. eighty six
16. disclosure
17. miles away
18. sunset
19. a fact of life


























