夏にTHREE1989を聴きたくなる理由がここにある――『2089』で描く時代もジャンルも超えた極上のポップス

ボーカルのShohei、DJのDatch、キーボードのShimoからなる男性3人組グループ・THREE1989が、およそ4年ぶりとなるオリジナルアルバム『2089』をデジタルリリースした。個人的にTHREE1989と言えば、夏が訪れるたびに聴きたくなるアーティストの代表格。夏をテーマにした楽曲が多いというのが当然の理由ではあるのだが、毎年この時期になるとやけに彼らの音楽を欲し、気づけばプレイリストへと手を伸ばしているーーそんな行動を取る機会が増えるからでもある。この求心力は、一体どこからくるのか。本稿では、例のごとく爽やかな仕上がりを実現した『2089』もトピックに挙げながら、THREE1989と夏の不可思議な親和性について探究してみることにする。
2016年にシングル「High Times」でデビューを果たしたTHREE1989は、当時再評価が進んでいたシティポップと、もとより彼らが憧憬を抱いていたとされるブラックミュージックの両要素を軸に、精力的なリリースを続けてきた。中でもキャリア初期の作品は、ディスコやニュージャックスウィングなど往年の名サウンドからの影響が色濃く、洒脱さとノスタルジーを綯い交ぜにした巧妙な聴き心地となっている。カラッとしたトラックと女性コーラスが妖艶に躍る「UMBRELLA」や、〈茹だる亜熱帯夜〉〈夏に溶ける君に夢中さ〉といったド直球なフレーズを投じるファンク「mint vacation」などの人気曲にいたっては、サウンド面の意匠に加えてリリックの情景描写もやけに刺激的で、誘惑多きシーズンに没入するトリガーの役割を十二分に果たしてくれる。
このように、THREE1989の作品には必ずと言っていいほど高等なテクニックが潜ませてある一方で、彼らの音楽はいつの日も潔いまでに“ポップ”だ。どれだけマニアックなアプローチを仕掛けようとも、Shoheiの伸びやかでいて繊細な歌声、さらには各々が有するメロディセンスがドラマティックに重なることで、万人の心をロックし得る普遍性が生まれる。こうした明快な構造もまた、夏季のエスコートをTHREE1989に頼る大きな根拠になっている気がする。メジャーレーベルに移籍した2021年以降は挑戦するジャンルも大幅に拡張し、彼ら渾身のポピュラリティが一層柔軟に冴え渡ることとなった(暑中見舞い的サマーソングを謳った「夏ぼうけ」、オリエンタルなリズムが癖になる盆踊りがコンセプトの「あぁ今夜」あたりは必聴!)。
本題である最新作『2089』を一言で表すなら“THREE1989流ポップスの極み”だろうか。すでに紹介した、キャリア初期のような専門的/文化的素養に基づくクールネスも要所で息づいてはいるものの、本作についてはほぼ全編にわたってカジュアルなムード構成が徹底されており、いい意味で計算高く、万人を意識して作られたアルバムであることが見て取れる。

























