『BLEACH』×Aqua Timez、再び交差する青春の記憶 「千の夜をこえて」から「OLDROSE」まで…20年の軌跡
「MASK」(2012年)は、アニメ『BLEACH』最終話直前の『死神代行消失篇』に起用された最後のエンディングテーマ。『死神代行消失篇』では一護が精神的に追い詰められていく様子が描かれる。敵の能力によって、織姫やチャドこと茶渡泰虎、家族までもが記憶を改ざんされ、敵の肩を持つようになった果てに、一護が唯一の味方だと思っていた銀城空吾が本エピソードにおける黒幕という展開には、それまでの『BLEACH』とは一線を画すサスペンスホラーの要素すら感じた。そんな一護の“孤独”を「MASK」は丁寧に描いていた。〈孤独という拠点で〉〈逆風に抱かれながら〉〈ここではない何処かに 逃げてしまいたくって〉というフレーズは、死神の能力を失ったことで「誰かを守りたい」という信念すらも果たせなくなった一護の空虚な心の内を暴くのだ。
ここまで取り上げてきた通り、Aqua Timezと『BLEACH』は主題歌を通してその絆を強固なものにしてきた。そして、今年3月には太志が『BLEACH』のために書き下ろした新曲「OLDROSE」をAqua Timezが配信リリース。あわせて、バンドと『BLEACH』の20周年を記念したスペシャルMVもYouTubeで公開された。歴代のOP、EDのオマージュカットや各話のタイトル、実写およびCG映像、さらには原作コミックの巻頭に記された“巻頭歌”などを織り交ぜながら制作されたMVは、当時からのファンにはたまらない映像に仕上がっている。
ピアノの旋律が印象的なミディアムテンポの「OLDROSE」には〈「一人では生きてゆけない」って綺麗事も/あながち嘘じゃないと思える〉というフレーズが登場する。「MASK」をはじめ『BLEACH』主題歌で度々“孤独”を歌ってきたAqua Timezが、物語の最終章へと向かうアニメ『BLEACH 千年血戦篇-禍進譚-』の放送を控えるこのタイミングで、“孤独”から解放されるようなフレーズをストレートに描くストーリーは感慨深いものがある。
1994年生まれで現在30歳の筆者にとって、Aqua Timezと『BLEACH』は“青春の象徴”だ。中学生の頃にはAqua TimezのCDをクラスメイトと貸し合い、アニメを観漁った。きっと同じような同世代のファンもたくさんいることだろう。時を経てAqua Timezと『BLEACH』がまた交差してくれた、その事実だけで嬉しい。そしてきっと、Aqua Timezにとっても、『BLEACH』の制作陣にとっても、互いに注ぐ想いは並々ならぬものであるはずだ。

























