ヨルシカ、米津玄師、Ado、amazarashi……宮沢賢治がアーティストに与えるインスピレーション

 ヨルシカが、アルバム『二人称』の収録曲「千鳥」のMVを公開した。「千鳥」は宮沢賢治の詩「風がおもてで呼んでゐる」に着想を得て制作されたものだ(※1)。

ヨルシカ - 千鳥(OFFICIAL VIDEO)

『春と修羅』に共振したn-bunaと米津玄師

 ヨルシカはこれまでにも、宮沢賢治の作品と呼応する楽曲を発表してきた。たとえば、「靴の花火」は『よだかの星』、「又三郎」は『風の又三郎』がモチーフになっており、各小説を想起させる世界観や引用が印象的である。同じく『二人称』に収録されている「修羅」も、宮沢賢治が生前に発表した唯一の詩集であり、作品と同タイトルの詩「春と修羅」に影響を受けて制作されたものだ。「修羅」のリリース時に、n-buna(Gt/Composer)は歌詞にも引用されている「春と修羅」の一節が心に残っているとコメントしており、MVの概要欄には母の書斎に忍び込んで宮沢作品を読んでいたというエピソードが綴られていた(※2、3)。n-bunaにとって、幼い頃に親しんだ宮沢賢治の作品が、制作のインスピレーションに繋がっていることが窺える。

ヨルシカ - 修羅(OFFICIAL VIDEO)

 詩集『春と修羅』には病床の妹・トシ(とし子)との生活の様子も描写されており、そのなかの一作が「恋と病熱」だ。2012年に同名タイトルの楽曲を発表している米津玄師もまた、宮沢賢治に影響を受けてきたことを明かしている。過去のインタビューによれば、彼は10代後半の頃に初めて『春と修羅』を読んだといい、精神的に不安定だった時期の指針のような存在になったと語っていた(※4)。特に、同作収録の「小岩井農場」の一節が好きだといい、この作品に触れていたのと触れていなかったのでは「大きく自分の人生は違っていただろうと思います」と語っていたほど(※5)。楽曲「地球儀」にはオマージュのようなフレーズが含まれているほか、アルバム『STRAY SHEEP』には小説『銀河鉄道の夜』をモチーフにした楽曲「カムパネルラ」も収録されている。

米津玄師 MV『恋と病熱』
米津玄師 - カムパネルラ Kenshi Yonezu - Campanella

 『銀河鉄道の夜』は言わずと知れた宮沢賢治の代表作であり、同作品からインスピレーションを受けた楽曲も、さまざまなアーティストによって数多く生み出されてきた。amazarashiが2014年に発表した「スターライト」もそのひとつで、曲中には『銀河鉄道の夜』に登場する人物たちの名前が見られる。また、〈鳥になるか〉というフレーズや、いつか自分も輝けるようにと絶望のなかから希望の光を見つけようとする歌詞の内容は、『よだかの星』も連想させる。amazarashiは、『よだかの星』の一節を朗読した楽曲「よだかの星」も過去に発表している。

amazarashi 『スターライト』

 『よだかの星』は、醜い姿ゆえに仲間から疎まれてきた鳥のよだかが、夜空を高く飛び続け、ついには星となって輝く存在になる物語だ。そんなよだかを、昨年開催された自身初のドームツアーのタイトルに掲げたのがAdoである。彼女はよだかの姿に自分自身を重ねたといい、「『なりたいと思っている私』になるための一歩にしたいという想いを込めて『よだか』と名付けました」と、ツアータイトルの由来を語っていた(※6)。Adoもまた、宮沢賢治の作品に強く心を動かされたアーティストのひとりなのだ。

 宮沢賢治が描いた独特な世界観の物語や詩は、時代を越えてさまざまなアーティストの想像力を刺激してきた。彼が残した言葉たちは、これからも多くの作品のなかで生き続けていくだろう。

※1:https://music.apple.com/jp/album/second-person/1876728371
※2:https://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/20250788.html
※3:https://www.youtube.com/watch?v=h4F-q-R67H0
※4:https://ginzamag.com/categories/interview/410163
※5:https://natalie.mu/music/pp/yonezukenshi24/page/3
※6:https://news.j-wave.co.jp/2025/11/content-4662.html

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