Gero史上最大規模のホールツアー『百鬼夜行』ファイナル公演 アリーナに舞い降りた変顔ボールとカオス

歌い手Geroが、2026年2月21日にキャリア史上最大規模のホールツアー『Gero Live Tour 2025 「百鬼夜行」』のツアーファイナルを、東京・お台場の最新アリーナ=TOYOTA ARENA TOKYOで開催した。
観客を公演に参加させることにとにかく躊躇がないGeroは、1万人キャパの壮大なアリーナであっても、観客との距離感が異常なほど近い。頻繁にMC時間を挟むために、Geroやバンドメンバーから無数に生成され続けた笑いが会場全体の呼吸を合わせ続けていた。
そんな“歌手のライブ”のイメージを超えた、Geroにしか叶わない“歌い手のエンタメ”の様子をレポートしていく。
16時半過ぎに会場入りすると、アリーナとスタンドはともにぎっしりと人で埋め尽くされていた。
この日はツアーファイナル、かつ2026年初ライブ、かつ翌日に控えたGero主催歌い手フェスイベント『ちゃんげろソニック2026』前日ということもあり、ファンの期待感が伝わってくるような熱気で充満していた。
開演前SEにはマイケル・ジャクソン「Thriller」や、レイ・パーカー・ジュニア「Ghostbusters」などが入り、今回も繋ぎを気にしない気まぐれで楽しい選曲に、アリーナの所々では小さな笑いが起きていた。
そんな和やかさから一転、客電が暗転すると同時にステージに「百鬼夜行」の文字が浮かび上がると、アリーナから黄色い歓声が沸き起こる。客席のペンライトが一斉に緑色を灯す頃には、ステージに登場したGero BANDのメンバーのパスタ(Key)、Hiroki169 ぺいちゅん(Ba)、SHiN(Dr)、海賊王(Gt)による重厚なロックサウンドが鳴り響いた。
Geroの華麗なシャウトで「The Bandits」が演奏されると、初っ端から観客にマイクを向けて煽り、お得意のハイトーンボイスをアリーナに轟かせた。


「NO WAY OUT」では観客によるクラップの波を真っ二つに割るように海賊王が極太サウンドのギターソロを響かせると、2曲目にしてハードロックがもたらすドーパミンに溺れた観客が熱狂した。

Geroが「デブって言うだけの曲です」と簡単に紹介した「名古屋のデブ」では、観客と力を合わせて大きな声で「デブ!」と叫ぶ恒例行事も滞りなく進む。お台場史上最大デシベルの「デブ」だったのではないだろうか。
この曲の間奏で必ず披露する歌い手・蛇足のモノマネ「Geroちゃんさぁ……」は毎回観客も真似させられているのだが、GeroのMCによると「ねっとり言ってみたら蛇足に似る」とのことだった。Geroと蛇足のファンは、今後のライブに備えて参考にしてみるといいかもしれない。
ドラマ『マトリと狂犬』のED主題歌として書き下ろされた新曲「イノチケズリ」では、ビートの合間をすり抜ける流麗なメロディを、客を煽りながら丁寧に歌い上げる。「フィラデルフィア」(wotaku)では極悪ベースのトラップビートをバックに、白いスポットライトを浴びたGeroがフロウしながら役に憑依する怪しい変幻を目の当たりにした。

「CH4NGE」(Giga)のカバーは、パスタによる憂いを帯びたピアノアレンジによって、Giga曲特有の艶やかなグルーヴを拡張。「ずっとサポートしてくれてありがとうございます」とファンに真っ直ぐなメッセージを伝えて披露した「プロポーズ」(内緒のピアス)カバーでは、胸が痛むような切ない愛を歌い叫んでいた。


観客席をぐるっと一周して配置されている2本のリボンビジョンが真っ白に染まると、スモークに包まれたステージから「アンノウン・マザーグース」(wowaka)の音楽が一気に客席に広がった。会場全体が白くなることで生み出された、MVの中に入り込んだような没入感は、どこか天国と一体化するような異様な感覚を想起した。



下ネタではしゃぐGeroも面白いが、“ボカロ曲の伝承”という、歌い手の役割を真っ直ぐに全うするGeroも渋くて格好良い。
感動も束の間、ここからGeroの観客へのだる絡みはエスカレートしていく。
MCによると、昨年の日本武道館公演『さようなら、武道館』の後にGeroが受け取ったファンのDMの一つに「東京公演に来た人に“東京から来た人〜?”と呼びかけるのは広すぎる」というクレームがあったとのこと。それを真摯に受け止めたGeroは今回、「足立区から来た人〜?」など23区別のセグメントで誠実な市場調査を実施した。その結果、今回の公演は23区のみならず関西、北海道、四国、九州、台湾からも一定数駆けつけているファンがいることが判明。シンプルに、Geroが圧倒されていた。
そこからツアー日替わり曲として「空の青さと思い上がり」をしっとりと歌い上げた後、「見てるだけ」の演奏が始まると、客席に突如Geroの顔面が両面印刷された巨大ボールが出現。Geroも思わず「気が散るなぁ」と本音をこぼすほど、歌の集中力を妨げ続けた変顔巨大ボールがジャンピング運動をする中、サビの振り付け(両腕脇をフリフリして猿真似ポーズで〆る動作)を皆で踊るカオスな状況。途中、観客の動きを止めて黙らせる“見てるだけタイム”も設けられ、何故か全員で数十秒間宙を舞うGeroの変顔を眺めるなど、ここにいる誰がどのような意図で仕組んだのか謎すぎる時間もあった。


「爆笑」(syudou)カバーでは、縦割りのエレキギターとマイナー調のピアノバッキングを背景に爆笑コールで盛り上がる。「Gravity」を挟んで披露した「シャンティ」(wotaku)カバーでは、ベース音にウィスパーを効かせたミックスボイス、キメでガナリを織り交ぜるなど表現が多彩で、歌い手としての表現力を爆発させていた。



その後のMCでは、突然Geroが絡んだ「Geroと肉チョモランマとめいちゃんしか聴かない」という思想の強いファンのリクエストで「小悪魔だってかまわない!」を、さらにGeroの気まぐれで「CHA-LA HEAD-CHA-LA」(影山ヒロノブ)、「ウィーアー!」(きただにひろし)などのアニソンを即興で披露し、Gero BANDが翻弄されるシーンもあった。
MC前のゴシックなムードを受け継いだ「ヴィータ」、紅白のライトに照らされる中極太のガナリとハイトーンを轟かせた「リンネ」では、観客のテンションも最高潮に達し、ヘドバンで徐々に乱れ始める。

そこにラスボス的に現れたのが「しゃよう」。ドラムソロから鳴り響いたシンセコードはアニメ『AKIRA』の「鉄雄のテーマ」(「鉄雄 TETSUO」芸能山城組)的な不気味かつ前衛的な和音で、そこにエコーのかかったGeroのシャウト、ビザールを思わせるソロギターの変調が重なり合う妖しい雰囲気。おそらくこの日のために用意されたのか直近のツアーでのサウンドと異なっており、ツアータイトルを最も体現するアレンジに仕上がっていた。


アンコールとして披露されたのは3曲。「BELOVED×SURVIVAL」と「HALO」、そしてこの曲がないと絶対に締まらないであろう定番曲の「うどん」だ。アリーナから4階席まで、皆でタオルをぐるぐる振り回しながら、最後のステージを作り上げて幕を閉じた。



20曲以上を全力で歌いながら観客を長時間ノンストップで笑わせ続けるGeroのエンタメのテンポ感と内容は、ネットを主戦場とする歌い手ならではのあらゆる才覚を凝縮したパフォーマンスだった。
























