『ONE PIECE』最後の主題歌を歌う夢 きただにひろしが語る――BUMP OF CHICKEN、AAA、Adoら珠玉のカバー

きただにひろし『ONE PIECE』と人生

 1999年にTV放送がスタートした『ONE PIECE』。世界中で愛されているこのアニメの軌跡をたどる2作品が完成した。3月26日にリリースされた『ONE PIECE COVER SONGS〜仲間の印×〜』は、きただにひろしが『ONE PIECE』の歴代楽曲をカバーしたアルバム。リスペクトと愛に溢れながら各曲をフレッシュに輝かせている歌声が圧倒的だ。原曲が大好きな人もわくわくすると同時に、嬉しい気持ちになるに違いない。そして4月23日にリリースされる『ONE PIECE 25th Anniversary BEST 1999-2024』は、25年間の主題歌を集めたベストアルバム。「ウィーアー!」を歌って以来、『ONE PIECE』と密接に関わりながら歩んできたきただにひろしが、カバーアルバムの制作エピソード、さまざまな名曲にまつわる思い出、アーティスト活動30周年を迎えた感慨を語ってくれた。(田中大)

Da-iCE=2人、AAA=7人……ひとりで歌いこなす凄技炸裂のカバーアルバム

『ONE PIECE COVER SONGS~仲間の印×~』
『ONE PIECE COVER SONGS~仲間の印×~』

――今回リリースされる『ONE PIECE COVER SONGS〜仲間の印×〜』では11曲のカバーをしましたが、選曲はどのようにしましたか?

きただにひろし(以下、きただに):まずは自分自身が好きで、声も合うと思った曲を選びました。それをピックアップしたあとに、『ONE PIECE』のファンのみなさんが好きな曲のランキングなんかも見ながら参考にしましたね。キーを下げちゃうと曲の印象が変わってしまうので、その点も考えましたね。『ONE PIECE』の楽曲へのリスペクトと愛を込めて作りたかったんです。

――アレンジャーさんには、どのようなことをお願いしました?

きただに:「テンポも含めてなるべく原曲のものを崩さず、よさを出してほしい」という難題をお願いして(笑)。

――(笑)。ひとりで歌うことが前提で作られていないグループの曲もオリジナルのイメージを大切にしているのが伝わってきます。

きただに:たとえばDa-iCEさんは2人で歌っていますし、AAAさんは7人なんですよね。グループだと誰かの歌にほかのメンバーの歌が被ってくるなんてこともありますけど、そういうのもひとりで歌わないといけなくて。ライブで歌うことも想定していたので、ブレスの位置まで考えましたし、ひとりで歌えるものでありつつも、苦にならないアレンジを心がけました。

きただにひろしデビュー30周年記念アルバム「ONE PIECE COVER SONGS~仲間の印×~」より「DREAMIN’ ON」

――「これを歌えるきただにさんはすごい!」って、聴きながら何度も思いました。

きただに:難題はいろいろありました。でも、自分の好きなことならば、チャレンジをするのって楽しいんです。人間はアップデートしながらチャレンジしていかないと、そこで止まってしまうから。常に上に行きたい気持ちを持っていたいですね。

原曲キーで歌うAdo「私は最強」、歌い方は大森元貴にも近い?

きただにひろし(撮影=池村隆司)

――Adoさんの「私は最強」と「新時代」は、ものすごいチャレンジですね。

きただに:超チャレンジでした(笑)。今回のアルバムのなかでキーになっている2曲でもあるので、レコーディングの最後に持ってきました。

――「私は最強」は、原曲と同じキーじゃないですか?

きただに:強いファルセットを出すためには、ある程度高くなくてはできないんですよね。「私は最強」は、原曲と同じキーのほうがやりやすかったので、そのままにしました。この曲の僕の歌い方は、作詞作曲をした大森(元貴)さんに近いと思います。

――きただにさんにとって新しい歌唱スタイルですか?

きただに:はい。1曲のなかの半分くらいがファルセットですから、「やってみたらどうなるんだろう?」という不安がありました。プリプロで自分の家でレコーディングしてみて、「ここの鳴らし方はこうなんだな」「こうすると歌として成立するな」とか、いろいろ考えて。挑戦をしたことで武器がまた一個増えたと思います。

――ファルセットって、使い方が難しいですよね。

きただに:そうなんです。使い方によってはギャグになってしまうので。歌として成立する鳴らし方というのがあるんですけど、若手のボーカリストのみなさんは素晴らしいですよ。いろいろ聴いて勉強させていただきました。

――Adoさんの曲は展開もめまぐるしいですし、難易度が高いのが容易に想像できます。

きただに:難しかったです。Adoさんの歌は一音一音が練られていますし、表現力も素晴らしい。世界を虜にする歌姫だなと、あらためて思いました。

――こういう曲をきただにさんも歌えると証明されましたから、今後おそらく田中公平さんがまた無茶ぶりの作曲をするんだと思います(笑)。

きただに:「あーーっす!」もそうでしたから(笑)。僕のなかで今まででいちばん高い声を出した曲です。無茶ぶりは、これからもあるでしょうね。

――「新時代」もお見事です。きただにさんの表現として、感情が込められているのも素晴らしいと思いました。

きただに:最後の〈新時代だ〉で締めるところは、僕ならではというか。力強さがあって、上手く歌えたと思います。キーをひとつ下げたんですけど、地声で歌っていい表現ができるキーを探した結果、こうなりました。

――キーの設定は、感情表現も考慮に入れているんですね。

きただに:そうなんです。たとえば「memories」(大槻マキ)はもうちょっと下げたほうが楽に歌えるんですけど、オーバーキー気味のほうが切なさが出るんですよ。ブレスの位置、抑揚、回し方、言葉の当て方とか、そういうのは曲ごとに考えましたね。あと、歌詞の発音も、たとえば〈行く〉という言葉があったとしたら「いく」か「ゆく」なのかを原曲を聴いて確認したり。家でたくさんメモをしてからレコーディングに臨みました。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる