堀江由衣、完全無欠のエンターテインメント 色褪せることのない少女を宿した可憐な歌声

 そして夜が明け、熊田先生が元に戻って物語はハッピーエンド。出演者/ライブスタッフ紹介のエンドロールが流れるエンディング映像が流れる。終了後、堀江がステージに再登場し、「実は昨日までの3公演はバッドエンドだった」といった説明から、物語の裏話や隠し設定が次々明かされていく。特に、最後の映像でカバンにあった青のヘッドホンについては「『文学少女倶楽部Ⅱ』でのタイムリープアイテムなので、これを使って選択肢を選び直して4回目のループでトゥルーエンドを迎えられた」と明かすと、どよめきと大きな拍手が湧き上がった。ちなみにその幕間映像には、編集に三度ほど立ち会うなど、強いこだわりがあったとか。

 そんな秘話の披露に続いては、難しいコール部分の多い「まじめにムリ、すきっ」がアンコールの幕開けを飾る。リリックビデオを背負いながら、堀江とダンサーがうちわを手にしてのダンスとともに披露したこのテクノポップをキュートに歌いつつ、場内のボルテージを上げ、アンコールのスタートに弾みをつけていた。

堀江由衣(撮影=草刈雅之)

 ここで、恒例となりつつある“堀ジャム”のコーナーへ。出題したお題に沿ってライブ中に演奏された曲のフレーズを文学少女帯に演奏してもらうこのコーナー。この日のテーマは「お気に入りポイント」。エンドウ.(Gt)が「innocent note」サビ部分のリフを、土屋雄作(Violin)が「Love Destiny」のDメロのソロを挙げるなど、各々がお気に入りのフレーズを演奏してポイントを解説。気になった点を堀江がさらに深掘りして音楽的な面白さをステージ上で感じ、それを通じてファンもその奥深さを味わっていた。さらに、踊りっ娘倶楽部による「ここどこでしょう?クイズ」も開催。演奏なしのダンスを観てどの曲の振り付けかを当てるコーナーだが、さすがに難易度が高すぎるのか、堀江はヒントとして「この時、私何してました?」と尋ねつつ、なんとか正解に辿り着こうと奮闘していく。

 そんなひと時を経て、「一緒にいっぱい声を出して踊っていただけたら」と披露したアンコール2曲目が「YAHHO!!」。冒頭から声を合わせて、またも一体感を持ちつつ、熱を帯びていく場内。カラッと明るくキュート寄りの歌声で曲を彩り、2サビ明けにはコールを交わしたりもしながらその盛り上がりを先導すると、Aice⁵の「Lady Go!」で劇団員はコールとともにさらにブチ上がり。中2階のステージに立って拳を突き上げたり、回したりしながら、間奏では客席を半々に分けてのコールタイムも設け、さらに会場の熱量を上げてみせる。

堀江由衣(撮影=草刈雅之)

 4公演に足を運んでくれた劇団員への感謝を述べつつ、「最後、悔いが残らないよう盛り上がってください!」と呼びかけて始まった、「Happy happy*rice shower」がラストを飾る。ここではブーケを手にしてステージ上を歩きながら歌唱し、またも大きなコールを送り続ける劇団員と視線を交わしていく。最後まで歌声のみずみずしさは変わらず、ステージングとともにその歌声によって幸せを大宮ソニックシティに降り注ぎ、キュートかつ軽快なダンスパフォーマンスを見せ、三度のジャンプで年をまたいだツアーを無事締めくくったのだった。

 ストーリーの面から副題の『The Walking YUI』を回収したうえで、歌声をはじめとしたステージングのフレッシュさと、活動を重ねるなかで生まれた円熟味を見事に見せてくれたのがこのツアーファイナルだったように思う。いつまでも色褪せない少女感を持った歌声と、時にはコールで、時には合唱で一緒にライブを作り上げる劇団ほりえは、今度どんな物語を紡いでくれるのだろうか。細部まで作り込まれた次の“公演”が、今からたまらなく楽しみだ。

堀江由衣(撮影=草刈雅之)

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