『ピーター・パン』朗読×音楽で浮かび上がらせる新たな物語 由薫&菜々香が語り合う、世界観の再解釈

由薫&菜々香『ピーター・パン』新解釈

 2月3日から9日、南青山BROOMにて『Song Storytelling in BAROOM』シリーズの第4弾『ピーター・パンとウェンディ』が開催される。同公演は朗読×音楽で名作を披露する作品で、演じる役者は2名のみというもの。今回、シンガーソングライターの由薫がピーター・パン役として、ウェンディ役の菜々香とともに名作『ピーター・パン』の世界を表現する。そこで、リアルサウンドでは由薫と菜々香の対談を企画。同公演に向けての心情や作品に対する思いを聞いた。(高橋梓)

ピーター・パンとウェンディの関係性を浮かび上がらせるふたりの“声”

由薫&菜々香(撮影=三橋優美子)

――まずは出演が決まった時に心情から教えてください。

菜々香:私は普段舞台で活動をしているので、朗読劇は初めてなんです。しかも、“音楽朗読劇”というのはあまり耳馴染みのない言葉だったので、どんな感じになるんだろうとワクワクしました。『ピーター・パン』という作品のなかに音楽が入ると、より世界観が広がるんだろうなとすごく楽しみに感じたのを覚えています。それに私はどちらかというと音楽がある舞台が好きなので、嬉しかったです。

由薫:私は音楽以外の仕事をほとんどしたことがないので、お話をいただいた時に嬉しい気持ちもありつつ、「自分にできるのかな?」と少し考える期間がありました。でも、『ピーター・パン』という馴染みのあるお話の舞台でもありますし、これまでの作品の映像を観たりして、「チャレンジしてみたい」という気持ちになっていって。演技をやったことがない私にこういった機会をいただけるのは貴重ですし、頑張りたいと思っています。

――菜々香さんがおっしゃったように「Song Storytelling」という形式は珍しいですよね。

菜々香:そうですね。朗読のなかに音楽があるという、ストレートプレイでも音楽劇でもない。演出の小見山(佳典)さんが「ただ読むだけではない朗読劇にしたい」とおっしゃっていたので、体の動きもちょっとつけてみたり、ふたりで目を合わせて会話をしているようにしてみたりしているんですけど、本を読みながらお芝居するのがすごく難しいです。お客さんにとっても聴覚の情報がほとんどなので、役ごとに声色や感情をちゃんと届けられるようにいろいろと工夫しています。

――先ほど公開稽古を拝見しましたが、「歌っているうちに動きたくなってしまうのでは?」と感じました。

由薫・菜々香:そうなんです!

――由薫さんもミュージシャンとしてステージに立って歌う時は、動きがありますもんね。

由薫:普段マイクを持って歌うので、右手が勝手に動きそうになるんです。それを「違う、違う!」と我慢する時があります(笑)。普段、ミュージシャンの方と一緒に音を奏でることはあっても、誰かと一緒に歌うということ自体が少ないんです。だからこそ、稽古を通して思ったのは、菜々香さんとご一緒すると相乗効果があるということ。相手がいるから自分にも感情が芽生えてくると気がつきました。

由薫(撮影=三橋優美子)
由薫

――“歌”という部分に焦点をあてると、おふたりともシンガーとしても活動をされていますよね。そこでの“歌”との違いはやはり感じるのでしょうか?

由薫:そこが実はいちばん苦労している部分で。シンガーソングライターとしての癖が抜けなくて、その癖を除くような歌い方をしている最中なんです。違いとしては、発声です。普段は自分なりの“ポップスの歌い方”をしているのですが、今回はマイクがあるとはいえ、ある程度大きな声で通るように歌ったり、声が沈まないようにしたりしなくてはいけなくて。たとえば、私の声が小さかったり、低かったりすると、字幕が出るわけではないので、お客さんにとっては何が起こっているかがわからないんです。

――たしかに。

由薫:なので、曲全体で見る歌い方ではなく、一つひとつのフレーズで感情の変化を伝えられるようにならなきゃと思っています。

――菜々香さんは歌う上で気をつけていることはあるのでしょうか?

菜々香:私もシンガーとしてライブをする時は由薫ちゃんが言ったように曲全体で捉えていますが、今回の朗読劇ではもっと細かく見ています。一行ごとに感情が変わったり、1番では悩んでいたけれど、2番ではすでに答えが見つかっていたり。曲の始まりと終わりでは大きく変化していることが多いので、それをどれだけ見せられるかが大切だなと感じています。

菜々香(撮影=三橋優美子)
菜々香

――公開稽古中に感じたのですが、歌詞がすごく聞き取りやすかったんですね。それは、お話しいただいたようなことに意識を向けていらっしゃるがゆえ、なんですね。

由薫:そうなんです。大正解!

菜々香:『ピーター・パン』というお話なので、今回は特にわかりやすく聞かせたい気持ちが大きいですね。

――おふたりは声の相性もいいですよね。この相性のよさは、ご自身ではどういうふうに分析していますか?

菜々香:由薫ちゃんの声って、息が混ざっていて、立体的に響いているように聞こえるんです。私の声はそれとは対照的で高くてピンッとしているので、由薫ちゃんの声が包んでくれているような気がしていて。それがピーター・パンとウェンディの関係性のようにも感じています。

由薫:あ、私も同じことを思っていました。

菜々香:本当に!?

由薫:本当です(笑)! 菜々香さんの声って、すごく立つんですよ。突き抜けてくる。それがプリンセスみたいだなと思っていて。細くて長い棒のようにスッとまっすぐ進むのに対して、私の声は霧がかっているイメージなんですよね。だから相性がいいのかなと思っていました。かといって、まったく違う声かというと、そういうわけではない。同じ音程を歌うパートがあるのですが、自分の声なのか、菜々香さんの声なのか、時々わからなくなることがあるんです。そういう意味でも、重なり合う部分と違う部分のバランスがいいのかなって。

菜々香:素晴らしい言語化! そうなんです、一緒に歌うとわからなくなるんですよね。

――公開稽古で歌った曲でもユニゾンのパートがありましたよね。たしかに、どちらの声かわからなかったです。

由薫:菜々香さんって、声の振り幅がすごい多いんですよ。一曲のなかでもいろんな響きを出せるし。

菜々香:声質の混ざりもいいのかもしれないね。

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