水曜日のカンパネラ、なぜ作品に愛される? 映画『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』主題歌で更新した自由度の高さ

12月13日より公開される映画『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』。廣嶋玲子による原作の同名小説は世界累計発行部数1100万部を突破し、全国学校図書館協議会選定図書にも選ばれた人気シリーズ。幸運な人だけが訪れることができる駄菓子屋・銭天堂を舞台に、そこで売っている「ふしぎ駄菓子」を食べた人々の顛末が描かれる。
この映画の主題歌「願いはぎょうさん」を担当しているのが水曜日のカンパネラだ。
人間の尽きない欲望や、心の満たされなさを描いたこの作品。銭天堂にはさまざまな願いを抱えた人々がやってきて、その願いが叶う“ふしぎな駄菓子”を買っていく。食べた客は願いを叶えることができるが、それで幸せになる者もいれば、願いが叶ったことで周囲の反感を買ったり、新たな欲が生まれたりして、逆に不幸になってしまう者もいる。映画は人々のそんな悲喜こもごもを描きつつ、最終的に幸せになれるか不幸になれるかはその人次第だと私たちに突きつける。
映画本編が終わり、満を持してエンドロールで流れてくるのが同曲。冒頭の〈これじゃない あれが欲しい〉というフレーズは、まさにこの作品で描かれる人間の欲深い一面を端的に表している。また、2番では〈楽をして生きたいな ずるがしこく勝ちたいな〉といった誰しもが考えてしまいそうな俗っぽい感情を歌う。
しかし、そんな怠けた感情を否定するようにして、この歌は〈強い人になりたきゃ〉〈人だましたり 嘘をついたり/せず正直に生きて行け〉と、人としてのあるべき姿を訴える。人間の欲深さと誠実さの両面を描くこの映画のストーリーに相応しい歌詞だ。
サウンド面に耳を傾けると、お囃子を連想させる独特のリズムであったり、日本の伝統楽器を彷彿とさせる和の音が散りばめられている。映画『銭天堂』の昭和レトロな雰囲気に通じる音作りと言えるだろう。全体的に漂う少々コミカルなテンション感も、かわいらしい猫のキャラクターや“ふしぎな駄菓子”の絶妙なネーミングセンスにくすりとさせられる同映画のテイストにマッチしている。タイアップ楽曲としてはあらゆる面で完璧と言っていい。
今年の水曜日のカンパネラは、ここまで立て続けにタイアップ楽曲を発表してきた。2月にリリースした「幽霊と作家」はドラマ『婚活1000本ノック』(フジテレビ系)主題歌、3月にリリースした「たまものまえ」はドラマ『僕の愛しい妖怪ガールフレンド』(Amazon Original)主題歌、4月リリースの「四天王」は東急プラザ原宿「ハラカド」OPムービー使用曲で、7月リリースの「赤猫」はテレビアニメ『ラーメン赤猫』(TBS系)主題歌。さらに、8月にはロッテ「ガーナチョコレート」CMソング「シャルロッテ」を発表、そしてドラマ『【推しの子】』(Amazon Original)の第7話の主題歌になっている「動く点P」もリリースしたばかり。