久保田利伸の進化し続ける“ソウル”を体感 新旧の楽曲と観客が生み出した一体感溢れる熱いステージに

久保田利伸の進化し続ける“ソウル”を体感

 6月に3年8カ月振りの新曲「the Beat of Life」を発表、9月にはWONKと初のコラボ楽曲「Life Like This」をリリースした久保田利伸が、ツアー『TOSHINOBU KUBOTA CONCERT TOUR 2024-2025「佐藤さん、いつものでよろしいですか?」』を現在開催中。9月14日の埼玉・三郷市文化会館を皮切りに来年1月まで、全10会場18公演で行われているもので、10月16日、17日には東京・NHKホールで開催された。

 「久保田利伸と言えば?」と聞かれたら、「LA・LA・LA LOVE SONG」や「Missing」といった楽曲が、パッと思い浮かぶのではないだろうか。ここ数年、楽曲をボサノバやラバーズロックなどにリアレンジした企画性の高いコンサートを続けて来た久保田が贈る、誰もが「そうそう、これこれ!」と思い浮かべるような楽曲や、久保田の王道と呼べるファンキーでソウルフルな楽曲を中心にしたコンサート、それが『TOSHINOBU KUBOTA CONCERT TOUR 2024-2025「佐藤さん、いつものでよろしいですか?」』だ。タイトルにある“佐藤さん”は日本で一番多い苗字で、それを冠することで久保田のイメージの最大公約数をユーモアたっぷりに言い表している。

 DJ DAISHIZENが繰り出す高揚感を誘うサウンドに観客が体を揺らし、ミラーボールが会場をきらびやかに照らす。老いも若きもオシャレなファッションに身を包み、鬱屈とした日常から解放される。ここはまるでニューヨークのディスコ……このツアーではお馴染みの光景で、開演前から大いに盛り上がった会場。NHKホールでも、観客はいてもたってもいられないといった様子で、久保田の登場を今か今かと待ちわびた。

 ライブは、冒頭からクライマックスのような一体感みなぎる展開。オールスタンディングとなって、手を上げ下げする動きを合わせてリズムに乗る観客。久保田もグルーヴィなサウンドに乗せて巧みなフェイクを披露しながら、カラフルなコートの裾を翻して軽快にステップを踏む。グリーンのパンツに足下はスニーカーと、アーティスティックなファッションもニューヨーカーといった雰囲気。ダンサーによるパフォーマンスがステージを華やかに彩り、名うてのミュージシャンがグルーヴを生み出す。

久保田利伸(撮影=入日伸介)

 久保田をトップとした、まさしくワンチームといったバンドのメンバーは、80年代から久保田を支える柿崎洋一郎(Key)、三浦大知や清水翔太らのライブにも参加しているGakushi(Key)。バンドメンバーの紹介時には、2人を日本におけるトークボックス(トーキングモジュレーター)の第一人者と紹介した。さらにアイドルのライブやレコーディングにも参加するオオニシユウスケ(Gt)、2011年から久保田のバックを務める森多聞(Ba)、SEAMOやRHYMESTERへの楽曲提供も行うDJ DAISHIZEN(DJ)、KREVAなどのレコーディングやライブに参加する白根佳尚(Dr)と全員が超一流。流れる水のように自然なグルーヴが打ち鳴らされ、久保田の歌声は水を得た魚のようにグルーヴの波を悠々と乗りこなす。時にはしっとりとバラードも繰り出され、その中で久保田が繰り出すフェイクやアドリブは、実に自由でエモーショナルだ。

 また、バッキングボーカルを務めたYURI、J’Nique Nicole 、YUHOの3人と、ダンサーのRICKY MAGMA、Angelo、KAREN、yuuのパフォーマンスも好評を得た。彼らの紹介コーナーでは、パリ五輪でも話題になったブレイキンを取り入れながら、圧巻のパフォーマンスで会場を沸かせたダンサーの4人。バッキングボーカルの3人も、スキルフルにエネルギッシュな歌声を響かせ、会場を感動の渦に巻き込んだ。

 まるで歌っているかのようにトークを繰り広げる楽曲の繋ぎやMCコーナーでも観客を楽しませる久保田。ツアータイトルにちなんで「佐藤さーん」とコールすれば、「はーい」と返って来る観客のレスポンス。「タマ(猫)〜!」「カエル〜!」とアレンジすると、「ニャ〜!」「ゲロゲロ〜!」と即座に対応する観客もさすが。また、今回はアルバムを携えてのツアーではないことから、セットリストの選曲には悩んだとのこと。この夏ニューヨークにて考えたそうで、DJ DAISHIZENがSEやBGMを流しながら、ニューヨークで経験したことを再現して会場を沸かせる場面もあった。まるで熟練のコント師による音楽ネタのように、ツーカーのコンビネーションでエピソードを繰り広げ、会場は爆笑に包まれた。

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