Number_iの音楽に欠かせない大切な要素=“ほろ苦さ” 黄金比的バランスの現実めいた歌詞とサウンド
Number_iの楽曲にはどんなイメージがあるだろうか。
先日、Billboard JAPANチャートにおけるストリーミングの累計再生回数1億回を突破した「GOAT」(※1)や「BON」、アルバム『No.Ⅰ』リードトラックの「INZM」などの挑戦的な楽曲から、やや強気な印象を抱く人も少なくないかもしれない。
しかし、それだけではない、ある種の“ほろ苦さ”を感じられるのも、Number_iの楽曲の特徴のひとつだと思うのだ。
先述した曲たちこそ自分たちのことを歌ったHIPHOP的なサウンドで攻めているが、それ以外ではポップスやバラードなど、Number_iはさまざまな音楽ジャンルの曲を歌っている。
たとえば、2ndデジタルシングルの「Blow Your Cover」。この曲では、前半で大切な人との思い出の夜が描かれつつも、後半からは相手を遠く感じる主人公の心情が滲み出る。つまり、甘さの奥に潜む苦味を歌った歌なのだ。平野紫耀、神宮寺勇太、岸優太の艶っぽい歌い方が、そんな甘くも切ない楽曲の世界観を引き立てている。ライブでは女性ダンサーとともにパフォーマンスされることも多く、大人な雰囲気を感じられる楽曲でもある。
「Blow Your Cover」だけでなく、Number_iの恋愛ソングは実は切ない系統のものが多い。サントリー「ビアボール」のCMソングに起用された「No-Yes」も、明るく爽やかな曲調の裏で、〈Yes or Noのどちらかと言うとNoになってくる〉〈もしもYesだったら/今はどんな世界線だろう〉といった、寂しさを感じさせるリリックが目立つ。憧れの存在を意識しつつも、隣にはいられない虚しさ。そんな少し後ろ向きな恋愛要素は、『No.Ⅰ』収録の「JELLY」やミニアルバム『No.O -ring-』通常盤限定のボーナストラック「花びらが舞う日に」などにも通じるものがある。
恋愛ソング以外でもそう。たとえば『No.O -ring-』のラストを飾る「夢の続き」は、〈追いかけても届かなかった夢の続きを今/生きてるんだ〉と、“夢を追うこと”を真っ直ぐに歌うバラードだ。力強さもありながら、〈目を閉じれば最後の横顔と/ほらまた雨〉と、過去を振り返る描写には切なさを感じられる。
同じように夢を追うことを描いた楽曲でいえば、〈あぁこの街で/何回も夢を見て/だけど何回も見失ってほら/また朝を待ってる Midnight〉と歌う「Midnight City」(シングル『GOAT』収録)や、〈夢みがちなだけでは儚い/どこに行けば当たれるstarlight〉と歌う「Streetlights」(『No.Ⅰ』通常盤ボーナストラック)などでもそう。雨だったり、夜の暗闇だったり、曲のなかでは前に進む過程での辛さを表すようなモチーフが登場していて、決してポジティブな要素だけではない。現実めいた歌詞が胸に刺さるし、今まさに夢を追ってがむしゃらに突き進んでいる最中であろう、3人の姿にも重なるように思う。