結束バンド×石原慎也、04 Limited Sazabys、大木伸夫、佐藤千亜妃……キャラと楽曲提供者によるシナジー

 爆発的人気を獲得したアニメ放送から約2年が経つ現在も、劇場総集編のヒットや、作中ユニット・結束バンドの夏フェス出演など、なにかと話題に事欠かない『ぼっち・ざ・ろっく!』。

 結束バンドとしてリリースされたセルフタイトルアルバム『結束バンド』も、2022年に異例のヒットを記録。そんな結束バンドによる新EP『We will』が11月6日に発売されることが決定し、9月6日からは音源の先行配信も始まっている。

【結束バンド】NEW EP「We will」 RELEASE MOVIE『夢を束ねて』/ぼっち・ざ・ろっく!

 もとより、下北沢を中心としたバンドシーンの情景を色濃く落とし込んだ点もヒット要因となった本作。そのためアニメ主題歌や前作アルバムにおいても、中嶋イッキュウ(tricot/ジェニーハイ)や谷口鮪(KANA-BOON)、北澤ゆうほ(the peggies)など、現在進行形で邦楽ロックシーンを牽引するバンドが手掛けた数々の提供曲も当時大きな話題を呼んだ。

 今作『We will』は、「少し未来の結束バンドのメンバーがそれぞれデモを持ち寄り作りあげた」というコンセプトから制作された4曲入りEPとなる。前作では曲の大半をボーカル・喜多郁代(CV:長谷川育美)が歌唱したが、今作では上記テーマゆえにメンバー全員が1曲ずつ歌唱を担当している点もポイントだ。

 アニメではさまざまな演奏経験を経て、主人公・後藤ひとり(CV:青山吉能)を中心に結束バンドとして活動を続ける決意を新たにした4人。そんなバンドの現在地点を、今まさに邦楽ロックシーンを燦然と彩る面々が、個性豊かに描いた曲が今回も集まっている。

「milky way」Vo.:喜多郁代
作詞・作曲:石原慎也(Saucy Dog) 編曲:三井律郎

 音源のトップバッターはバンドのフロント・喜多をイメージして石原慎也(Saucy Dog)が制作した「milky way」。メンバーの中でも特に交友関係が広く、名実ともにバンドの顔として大勢に愛される喜多。そんな彼女と、今や若年層を中心に確たる人気を得るSaucy Dog・石原の存在に、近しい面影を抱く人も多いことだろう。

 喜多は誰にでも分け隔てなく接する陽キャである一方、自身の凡庸さをコンプレックスとし、他メンバーが持つ一転突出型の才への憧れを活動の原動力とするキャラだ。周囲との調和を重んじ、時に“流される”ことを自らの生存戦略とする。そんな彼女が初めて己の意志で掴んだ場所ーーそれが結束バンドでもあった。

 彼女のそういった等身大の魅力を、日常性かつ親近感ある表現へと噛み砕き、キャッチーではつらつとしたギターサウンドに乗せる。現在進行形でロックバンドとして成長を続ける、Saucy Dogと石原の強みが際立つ秀作だ。

「惑う星」Vo.:山田リョウ
作詞・作曲:大木伸夫(ACIDMAN) 編曲:三井律郎

 続く収録曲はベース・山田リョウ(CV:水野朔)の制作曲をイメージした「惑う星」。本作を手掛けたACIDMAN・大木伸夫の“宇宙フリーク”っぷりを知るファンの中には、その曲名についニヤリとした人もいるのでは。

 「音楽偏差値は高く、でも、サビは疾走感があるメロディアスな曲」というオーダーの通り、細部にわたって熟練味漂う作り込みを感じさせる本作。そこには四半世紀を超える年月、バンドを率いてきた、大木の豊富な経験に裏打ちされた確かなサウンドメイク力が垣間見える。直近のACIDMANのヒット作「輝けるもの」にも通じる、重量と疾走感を兼ね備えた壮大さも楽曲の大きな魅力のひとつだろう。

 ミステリアスかつ音楽へのストイックさを揺るがぬ魅力とする作中キャラ・リョウ。突出した個性を絶対的な武器とし、今度こそ“バンド”として生きたいと願う彼女。その矜持や結束バンドへの切なる思い入れを鮮烈に描いた点でも、本作は今EPの中で一段と強い煌めきを放つ楽曲にもなっている。

「UNITE」Vo.:伊地知虹夏
作詞:GEN 作曲:04 Limited Sazabys 編曲:akkin

 ドラマー・伊地知虹夏(CV:鈴代紗弓)による楽曲をイメージした「UNITE」は、作曲を04 Limited Sazabysが、作詞をメンバーのGENが担当している。バンドの緩衝材として、メンバーの結束を繋ぐ立ち居振る舞いも印象的な彼女。そこに“UNITE=団結、結合する”という曲題を冠した点にも、本作が初の楽曲提供となるGENのずば抜けた解釈の深さが窺える。

 元々04 Limited Sazabysが十八番とするメロディックパンクは、構成要素の肝のひとつにドラムの2ビートがある。その点でもドラマーの象徴曲としての説得力は抜群。加えてGENの歌声も明瞭な響きが強みであり、バンドの曲作りも必然的にその声質に沿う形となるだろう。近しい性質を持つ女性ボーカルへの楽曲提供はまさにハマリ役だ。

 なにより、虹夏は誰よりもライブハウスという場で純粋培養されてきたキャラだ。そんな彼女に曲を宛て書くバンドとして、長年現場主義を貫き続ける04 Limited Sazabysの心強さたるや。その要素もまた転がり続ける結束バンドの実体を、楽曲によって色濃く映し出したのだろう。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる