NMB48『天使のユートピア』に詰まった“エモさ”の正体 山本彩らも参加するドラマティックなバックストーリー

NMB48『天使のユートピア』の“エモさ”

現メンバーの気持ちを反映した、山本彩の提供曲「僕らはまだ」

 劇場公演CDでは、同公演で披露された個性的な新曲にも注目してほしい。

 表題曲「天使のユートピア」は、主人公の葛藤や焦燥感に満ち溢れていた「ここにだって天使はいる」とは対照的に、影から光へと向かう希望的な歌詞になっている。歌詞内の「太陽」の扱いをとっても、「ここにだって天使はいる」は自身の夢に影を落とす忌むべき存在として描かれていたが、「天使のユートピア」では〈影と暗闇を追い越したら 今こそ生まれ変わる太陽出会えるんだね〉と光の象徴として表現。NMB48がこれから向かう先をポジティブに暗示している。

 また、9曲目の「僕らはまだ」は、かつてのエースである1期生・山本彩が作詞・作曲を担当(作曲は田中マッシュと共作)。作詞には小嶋花梨、坂田心咲、塩月希依音、芳賀礼も参加し、山本が彼女たちの話を聞き取った上で、今のNMB48のきらめきを歌詞に込めた。山本も自身のXで、「今の皆の歌が書きたくて メンバーから受け取った色んな想いを 詰め込んだ一曲です。」と投稿。「僕らはまだ」という自分たちの未完成な部分を表したタイトルも、『天使のユートピア』の公演のテーマ性に合っているのではないだろうか。一方で〈自分以外が眩しくてつい目を背けたくなるけど〉など素直な心情も歌詞に反映。エモーショナルでありながら、メンバーそれぞれの生々しい内面性も心に残る楽曲となっている。

 7曲目の新澤菜央、山本望叶のユニット曲「チュッてギュッてグッと♡」は、筆者も公演で初めて聴いたときその世界観に一気に引き込まれた。現在「ぶっ恋呂百花」名義で活動する1期生の木下百花が作詞・作曲・編曲をつとめた同作は、かわいらしさと浮遊感にあふれた中毒性抜群のナンバー。公演では、新澤、山本の“誓いのキス”もあり、魅力的という意味でのイチャイチャ感が曲から伝わってくる。

 グループから巣立ったメンバーによる楽曲が、現在のNMB48を後押しするという胸が熱くなる展開も歴史を重ねてきたからこそできること。そういったドラマティックなバックストーリーも同公演が持つエモーショナルさを増幅させているのではないか。

 同公演は、鑑賞したファンたちからも高い評価を得ているという。ただそれは決して贔屓目ではなく、「公演」としてきわめて秀逸だったからに他ならない。それは実際、初日公演を鑑賞した筆者も実感していること。劇場公演CD『天使のユートピア』は、公演鑑賞者にとってはその興奮がよみがえってくるものである。また「公演を観ていない」という人が聴いても作品としての完成度にきっと驚くはず。その上で、NMB48が新たな時代を手繰り寄せようとしていることも伝わるのではないだろうか。まさに、NMB48の現在地が詰まった好盤である。

■リリース情報
NMB48 劇場公演CD『天使のユートピア』
発売日:2024年8月14日(水)
形態数:通常盤全1形態(CDのみ)
価格:通常盤¥3,630(税込)
品番:UMCK-1773
購入:https://nmb48.lnk.to/tenshinoutopia_CD

配信:https://nmb48.lnk.to/tenshinoutopia

<収録曲>
01.overture(NMB48 ver.)
02.OUR STORY
03.青い春よ
04.愛デンティティ
05.ROUTE48
06.君はエイリアン
07.チュってギュッてグッと♡
08.SPARK
09.美しく激しく咲く
10.僕らはまだ
11.脇役·学生Z
12.天使のユートピア
13.全部抱きしめろ!
14.HOME~ずっと友達~
15.繋ぎ歌~世界の国からこんにちは~
16.永遠のメロディー

<特設サイト>
http://www.nmb48.com/special/tenshinoutopia

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