NMB48『天使のユートピア』に詰まった“エモさ”の正体 山本彩らも参加するドラマティックなバックストーリー

NMB48『天使のユートピア』の“エモさ”

 大阪・難波にあるNMB48劇場を拠点に活動するアイドルグループ、NMB48が8月14日、劇場公演CD『天使のユートピア』をリリースする。同作は、5月14日開催のオリジナル公演『天使のユートピア』の初日に披露された全15曲をCD化した内容だ。しかし、単なる“ライブの再現盤”として片付けることはできない。

NMB48 劇場公演CD『天使のユートピア』トレーラー

 まず重視してほしいのが、同公演は、NMB48にとって2013年11月のTeam Nによる3rd Stage『ここにだって天使はいる』以来、約10年半ぶりとなる待望の新オリジナル公演であること。『ここにだって天使はいる』は、グループにとって初のオリジナル公演だった。当時、公演初日に立ったのは、市川美織、小笠原茉由、門脇佳奈子、岸野里香、木下春奈、古賀成美、小谷里歩、近藤里奈、上西恵、白間美瑠、西村愛華、林萌々香、山口夕輝、山本彩、吉田朱里、渡辺美優紀の16名。秋元康が総合プロデュースを担当し、Team Nのために書き下ろしたオリジナル曲が揃えられた。

 とりわけ、表題曲「ここにだって天使はいる」は〈未来は幻覚 楽しいだけじゃない 悲しみのそのそばに天使はいる〉という歌詞にあるように陰を持つ名曲で、それまでのNMB48のイメージとは違う側面を感じさせた。そういった曲も含めた同公演は、AKB48グループの数あるオリジナル公演のなかでも間違いなく傑作の一つとなった。NMB48でも再演が重ねられているなどし、まさに「伝統的公演」として受け継がれている。

18歳・塩月希依音が公演でセンターを務めた意味の大きさ

塩月希依音
塩月希依音

 『天使のユートピア』は、そんな『ここにだって天使はいる』をついに塗り替える公演として期待を集めた。そして実際、NMB48の現在地を刻み込むものになっていた。

 かくいう筆者も取材のために同公演へ足を運んだが、1曲目「OUR STORY」でのNMB48の新時代到来を告げるフォーメーションに鳥肌が立った。センターポジションにまず就いたのが、18歳の塩月希依音。幕開けは、彼女がこれからのNMB48の鍵を握ることを予感させ、たまらなく心が躍った。塩月は、同公演全体のセンターも堂々とつとめあげた。

坂田心咲
坂田心咲

 「OUR STORY」では、曲中盤から坂田心咲もパフォーマンスの中心に加わった。彼女もまた、5月リリースのシングル表題曲「これが愛なのか?」で塩月とダブルセンターを担った18歳の逸材である。そもそも『天使のユートピア』という公演タイトルは、メンバーが理想郷を目指して挑戦する様子や未来を描く姿をイメージして名付けられたもの。オープニングの“塩月・坂田体制”は、グループの「未来」という点で一つの象徴のように映った。

 また、同公演ではキャプテンを19歳の泉綾乃、副キャプテンを16歳の瓶野神音がつとめた。MCでは、泉が「近い未来、いつか泉綾乃が新公演(のキャプテン)で良かったって、安心できたって、みなさんにも、メンバーにも言ってもらえるような温かいキャプテンになりたい」、瓶野が「このなかでも下の期生で、後輩の私なんかが(先輩にアドバイスなどを)言っていいのかなって不安もあったんですけど、副キャプテンに選んでいただいたからには、この公演をより良くするために縮こまっていたらダメだなって。みんなのことを引っ張っていける存在になりたい」と口にした。その言葉からは、自分たちがグループをリードしなければ未来は切り開かれないだろう、という強い意志が感じ取れた。

 この劇場公演CDを聴くとき、そういったグループ全体の高揚感、気迫、そしてメッセージを思い浮かべると、より噛み締めがいがあるのではないだろうか。もちろん、公演プロデュースを担当したNMB48のプロデューサーの剱持嘉一、サウンドプロデューサーのCarlos K.による構成の妙味や楽曲のクオリティの高さも実感でき、何度も聴きたくなるような充実した作品となっている。

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