サカナクション、5人で鳴らす純粋な喜び 新たな物語の始まりを告げたアリーナツアー『turn』

サカナクション、ぴあアリーナ公演レポ

 有機的な楽器の重なりが生み出す叙情性とロックな高揚感があり、ライブ中盤にはサングラスをかけた5人が横並びになってプレイするDJセットのバッキバキなハイテンションゾーンがあり、みんなで歌える歌謡性があり……「これぞサカナクション!」と言うべきパフォーマンスを浴びまくった2時間半。でも、もちろんこれは「集大成」というわけではない。ステージ上で何度も「ただいまー!」と叫んだ山口も、メンバーたちも、感傷的になる暇もなく「今この瞬間」を謳歌し、そして1歩1歩、未来に向かって進んでいるようだった。MCで山口は「もう次にやりたいことがある」と語った。彼は「元には戻れないと思う。リハーサルや制作を休むこともあるし、元には戻れない。でも、この病気を抱えながら、またこの5人で、チーム・サカナクションと進んでいく自信がついたし、新しいサカナクションになる決意もできた」と、確かなビジョンとして、彼が思い描く未来を、言霊を宿すように口にした。

 最後に山口は「今日このライブに来てくれた皆さんにも、ここに来るまでにいろんな物語があったと思います。皆さんの物語と、サカナクションの物語が、これからも一緒に進んでいけるように。いい時も悪い時も、一緒に楽しんでいきましょう」と語った。アンコールのラストに演奏されたのは「シャンディガフ」。穏やかで美しい演奏が、サカナクションや私たちの前に広がる道を、そっと、丁寧に、照らし出すように響いた。

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