YUKI、新しい学校のリーダーズ、結束バンド、ヤングスキニー、今市隆二……注目新譜5作をレビュー
New Releases In Focus
毎週発表される新譜の中から注目作品をレビューしていく連載「New Releases In Focus」。今回はYUKI「風になれ」、新しい学校のリーダーズ「Arigato」、結束バンド「月並みに輝け」、ヤングスキニー「不純愛ラブストーリー」、今市隆二「RED」の5作品をピックアップした。(編集部)
YUKI「風になれ」
ニューアルバム『SLITS』のラストナンバーで、『みんなのうた』(NHK)でもオンエア中の一曲。タイトルから青春まっさかりのスプリンター、みたいなイメージを想像したのだが、実際はゆったりと歩きながら大空を見上げ、特に何も起きない日常にも勇気を見出していく、穏やかさの中に確かな希望が宿るナンバーだ。アレンジはLITTLE CREATURESの鈴木正人。ホーンが入るだけで華が生まれるのは当然として、意外な動きを見せるベースライン、鍵盤とリズムギターのやけに複雑な絡み方、間奏パートのそれぞれのアンサンブルなど、細部にまで耳が引きつけられる。ただまっすぐで明るいだけじゃない、今のYUKIの豊かな成熟が伝わる一曲。(石井)
新しい学校のリーダーズ「Arigato」
4月に行われた『Coachella Valley Music and Arts Festival 2024』でいち早く披露され、5年ぶりのフルアルバム『AG! Calling』にも収められた「Arigato」。オーセンティックなファンクを軸にしたトラック、SUZUKAのハスキー&ソウルフルな歌声は、このグループの音楽性の核そのものと言っていいだろう。〈はみ出してる姿 希望をくれて 今日もThank you〉に象徴されるファン目線(もしくは自画自賛)のリリックも素晴らしい。個性と自由を前面に押し出し、既存のアイドルの定型を軽々と超えながら活動のスケールを広げ続けている4人。自らの魅力や存在意義をストレートに放つ「Arigato」は、彼女たちの新たなアンセムとして浸透することになりそうだ。ホウキをギターのようにかき鳴らす“青春の衝動”を地で行くパフォーマンスも最高だ。(森)
結束バンド「月並みに輝け」
公開から3日間で累計動員数14万113人、累計興行収入2億1847万888円(どちらも6月9日時点、興行通信社)を達成した劇場総集編前編『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』のオープニング主題歌「月並みに輝け」。エレキギターの鋭利な響き、〈天才だって信じてた バカみたいだ〉という告白のような言葉からはじまるこの曲は、“やりたいこと”に立ち向かうすべての人を励まし、鼓舞するアッパーチューンだ。才能があるかないか、そんなことは問題ではない。自分自身が抱えている情熱に身を任せ、とにかく動き出すんだーーそう、「月並みに輝け」には聴き手を行動へと誘うエンパワーメントに溢れているのだと思う。生々しいライブ感に貫かれ、「弾いてみたい!」という欲望を生み出すバンドサウンドも魅力的。ぜひ、今年の秋の文化祭を目指して、今すぐ練習をはじめてみて!(森)