『ラップスタア』の在り方はどう変化した? Kaneee、Watson……“王冠が無い王”の活躍から考える
MIKADO
和歌山県和歌山市築港出身の2001年9月30日生まれ。放送中の『ラップスタア 2024』に挑戦したものの、上位40名の「SELECTION CYPHER」にて敗退。まだ番組登場から間もないMIKADOだが、『ラップスタア誕生 2020』にて大量の米俵をバックにラップしたTOFU、前回の『ラップスタア誕生 2023』ではファイナルステージまで進出し、最近はKEIJU、LANAやElle Teresaらと共演する7ら、いわゆる“和歌山勢”のひとりとして、今後への大いなる期待込みで最後にピックアップしておきたい。
MIKADO自身、ラップスタアになる素質は抜群で、バックグラウンドとしては、父親が拳銃で撃たれて亡くなり、母親もつい昨年まで刑務所生活だったとのこと。なかなかのストリートライフを歩んできた。ラップスタイルについては、Watsonがかつて、Tee「Japan (feat. Watson)」にて、〈今気になってる子Mikado/女の子じゃ無いrapperの〉とネームドロップで興味を示していたように、いわゆる“Watsonフォロワー”に近いものを感じる。
今回の応募動画では、Homunculu$謹製のドリルビートを選択し、「Homunculu$のビート 俺1番似合ってる 地元は築港 分からすいい加減」とラップ。「数少ない友達と成功はセットでいくぞ まるでマクド」のラインからその後に「誰も口挟ませない 俺がゲトるbands」と、ハンバーガーのバンズを絡めて先に登場した“マクド”の伏線を上手く回収したり、動画内で実際にハンバーガーを持ち出して食べ始めたりと、映像としてもサグユーモアが笑えるものだった。
また、筆者観点では彼の言葉通り、どのラッパーよりも上手くビートアプローチをしていたと確信しているのだが、それもそのはず。なにせ、以前にはHomunculu$、TOFUらとクルー・GREEN ICEで共に活動をしてきた同志(現在は解散)。Homunculu$ビートは勝手知ったるところだろう。
そのほか番組内では、R-指定(Creepy Nuts)から“ガヤ師”としての才能を見出されていたMIKADO。サイファー審査でこそ繰り出されなかったが、応募時の音源では「Homunculu$のビート 俺1番似合ってる(言った!!)」というアドリブが入っていたのだ。「言った!!」というあまりにストレートすぎて、逆にこれまで“言われて”こなかったアドリブ。あまりに発明すぎる。MIKADO自身も気に入っているようで、「言った!!」という楽曲もすでにリリースしているほか、7、Kohjiyaらがリミックスに参加することも決まっているらしい(ちなみに、ここでの“言った”は“言質を取った”などではなく、“お、出たな!”といったポジティブな意味を持つローカルスラングとのこと)。
そんなMIKADOの楽曲を初めて聴くならば、2022年2月の発表曲「SLATT!!」がおすすめ。ビートを手掛けたのはHomunculu$で、フック終盤の〈この街から飛び立つ 築港1丁目の話〉まで、MIKADOの出自がリリックに敷き詰められている。また、TOFU & MIKADO名義でつい先日に発表されたばかりのアルバム『New Vintage』も見事だった。