月詠み、2ndストーリー開幕で一層深まる心情表現 長期に渡って楽しめる緻密な物語

月詠み、『それを僕らは神様と呼ぶ』開幕
月詠み『死よりうるわし』Music Video

 月詠みの醍醐味の一つである物語と音楽の融合という点でも、今作は健在。歌詞には〈ただの夢で終われば〉や〈今日死んだっていいとさえ言える〉など、小説にまつわるフレーズが多々あり、小説を一度でも読んだ者であれば物語のワンシーンがフラッシュバックするような新体験に見舞われること間違いなし。特に、1曲の中で主人公2人の視点が交錯している点が興味深い。

 たとえば、冒頭の〈嗚呼 微睡みの先に映る悪夢/また一つ、現実に変わる〉の箇所は千春視点で、〈パラペットの上に立ちながら/乱れた息を整える〉のパートは照那視点と考えられる。どちらか一方の立場だけでなく、両者の視点を描くことで、その場の状況や人物像が立体的に浮かび上がるような歌詞と言えるだろう。加えて、小説だけでは分からない2人の心情のより深い部分が歌詞には表現されているため、物語の世界の奥深くまで入り込めるような感覚もある。小説から楽曲まで制作を一手に担うユリイ・カノンの手腕が発揮された見事なリリックだ。

 前作「導火」から起用された新ボーカルのJunaとmidoの2人の歌声の絡み合いにも注目したい。登場人物が2人の物語だからこそ活きるこのツインボーカル形式は、先述した二者の視点が混在した歌詞の作りにもマッチしている。どのように人選が行われたのかは不明だが、2人の歌声はどこか似ていて、両者の織りなすハーモニーはこの上なく美しい。なかでも〈死より麗しいものを 知らずにいられたら〉あたりの感情表現には、なんとも胸が掴まれるものがある。

 演奏面としては、ピアノにユリイ・カノン、ドラムになおk、ベースに土井達也、ギターに藤井健太郎が参加し、全員が強固なアンサンブルを奏でている。秩序の中にも激しさがあり、楽曲の持つエモーショナルな魅力を引き出している。総じて、聴き手が物語の世界に入り込み、共鳴できるような没入感を味わえる楽曲だ。

 短編を小出しにすることによって、長期にわたって楽しめるコンテンツと化している現在の月詠み。もはや連載漫画のように新しいストーリーが次々に公開され、次回はどんな展開になるのかと期待させてくれている。物語と音楽が融合することで、楽曲が一瞬で消費されることなくリスナーの興味を持続できている点も強く、楽曲が奥行きと長期的な視点を獲得している。今は物語にたびたび登場する「あいつら」の存在や、照那の過去も気になるところ。前作と今作の間を埋める『Chapter:002』の公開も今から待ち遠しい。

■リリース情報
2024年5月29日配信リリース『死よりうるわし』
ストリーミングサービスおよびiTunes Store、レコチョク、moraなど主要ダウンロードサービスにて配信中
URL:https://jvcmusic.lnk.to/Shiyoriuruwashi
※音楽ストリーミングサービス:Apple Music、Spotify、YouTube Music、LINE MUSIC、Amazon Music、Deezer、AWA、Rakuten Music、KKBOX、TOWER RECORDS MUSIC

月詠み New Single『死よりうるわし』MV:https://youtu.be/UdFOP7H20YI
月詠み 2nd Story『それを僕らは神様と呼ぶ』Teaser:https://youtu.be/4aulzXoY6ME
月詠み2nd Story『それを僕らは神様と呼ぶ』Special Site:https://sorekami.tsukuyomi2943.com/

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