月詠み、2ndストーリー開幕で一層深まる心情表現 長期に渡って楽しめる緻密な物語

月詠み、『それを僕らは神様と呼ぶ』開幕

 ボカロP・作詞家・作曲家のユリイ・カノンによる物語と音楽を展開するプロジェクト、月詠みの新曲「死よりうるわし」が5月29日にリリースされた。その直前に公開されていた小説『2nd Story「それを僕らは神様と呼ぶ」Chapter:001』と合わせて、月詠みの紡ぎ出す物語に大きな注目が集まりそうだ。

それを僕らは神様と呼ぶ

 4月に発表した楽曲「導火」にて、ついに2ndストーリー『それを僕らは神様と呼ぶ』が開幕した月詠み。緻密なアニメーションの施されたMVが大きな反響を集めており、その注目は日に日に増している。しかし、その際に公開されたストーリーは物語の第三編にあたる『Chapter:003』だったため、まだまだ謎も多かった。「照那」と「千春」とはいったい誰で、どんな関係なのか。2人が見る「夢」とは何なのか。そうした疑問の一端が、今回のリリースで明らかになったというわけだ。

 今回公開された『Chapter:001』は、まさに物語の幕開けに相応しい内容である。ポイントとなるのは、やはり主人公2人の出会いや関係性の行く末だろう。主人公は高校3年生の宇栄原照那(ウエバルテルナ)と、同じ高校に通う阿形千春(アガタチハル)の2人。物語は照那が校舎の屋上に立ち、飛び降りる寸前という緊迫した場面から始まる。自殺する人間の心情や細かな行動の描写は妙にリアルで、飛び降りようとする照那に対して「ねえ、まだ?」「飛び降りるなら早くしてよ。ここ寒いし」と素っ気ない言葉を浴びせかける千春の異常なキャラクター性など、小説として読み応え十分。そして、なぜ照那はそうした行動に出ようと思ったのか、なぜ千春はそこに居合わせたのかといった背景も、少しだが明かされる。とりわけ、夢で見た光景が現実となってしまう特殊な能力を持つ千春が醸し出す謎めいた存在感は、物語が進んでいく上での強力な推進力となっており、これからのストーリーの展開が気になるばかりだ。

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