ガロ、色褪せることのない名曲の数々 70年代フォーク&ロックシーンを牽引したバンドの奥深さ

ガロ、ベストALから紐解く音楽の評価

 1972年に出された「学生街の喫茶店」の大ヒットで一躍フォーク界に名を馳せたガロ。今回編まれた最新ベスト盤『シングルズ&オリジンズ』は、元メンバーの大野真澄が選りすぐりの22曲をセレクトした特別な一枚である。その構成は、【prologue】【singles】【additional tracks】【epilogue】の4章からなるストーリー仕立てになっており、その作品世界を極めたファンから、初めてガロの音楽に足を踏み入れる新たな世代に至るまでも新鮮に感じられる画期的なベストアルバムとなっている。

 ガロは、堀内護(マーク)、日高富明(トミー)、大野真澄(ボーカル)の3名によるフォークロック・バンド。ユニットを組んでいた堀内と日高に大野が加わって、1970年11月に結成された。かまやつひろしのバックバンドを経て、村井邦彦と山上路夫が立ち上げたアルファレコードのレーベル、マッシュルームの第1回発売アーティストとして、ミッキー・カーチスのプロデュースの下、1971年デビューに至る。グループ名は当時ザ・タイガースのマネージャーを務める一方で3人の世話役でもあった中井國二氏が自分の子供の名前に考えていた「我朗」から命名されたのだという。

 彼らはアメリカのロックバンド、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング(通称・CSN&Y)から強い影響を受け、そのコピーを手始めに、卓越したコーラスワークとギターテクニックで実力を発揮していった。なんといっても1972年にリリースされ、翌73年になって大ヒットした「学生街の喫茶店」のイメージが強大であるが、活動後期にはフォークのみならず、プログレッシブ・ロックやハード・ロック的なアプローチも見せて幅広い作品を展開しており、ロックバンドとしての評価も得ている。やがてメンバー間の音楽の方向性の相違から、1976年3月20日に神田共立講堂で行われたコンサートをもって解散に至った。5年余りに及ぶ活動期間中には、12枚のシングルと、8枚のオリジナル及びライブアルバムが発売されている。

 今回のアルバムは、1974年5月にリリースされた5枚目のアルバム『CIRCUS(サーカス)』に収められていた「演奏旅行」から始まる。自らを歌ったバンドのテーマ曲のようなコンセプトの作品でプロローグに相応しい選曲である。元のアルバムは全16曲中12曲の作詞を山上路夫が担当しており、これも山上の作。メンバー以外では最も多くの作品を手がけ、ガロにとって最も重要な作詞家といえる。

 シングルのヒットナンバーの先頭を切るのは、ソフトロック楽曲として人気の高い2ndシングル曲「地球はメリー・ゴーランド」。続いて3rdシングルのもともとはA面だった「美しすぎて」、デビュー曲の「たんぽぽ」が並ぶ。村井邦彦作曲による「美しすぎて」のA面は当時メンバーの総意であったらしいが、結果的にB面だった「学生街の喫茶店」の方がヒットしてAB面が入れ替わることになったのはよく知られている話。両曲とも優れた作品ながら、大衆に支持されたのはすぎやまこういちの作曲で、歌謡曲テイストを感じさせる「学生街の喫茶店」の方だった。作詞はどちらも山上によるもの。

ガロ「公園通り」
ガロ『公園通り』

 デビュー盤のB面曲「一人で行くさ」を挟んで、「学生街の喫茶店」、そのヒットの余韻が冷めやらぬ中で出された5枚目のシングル「君の誕生日」、6枚目の「ロマンス」と、お馴染みのヒットナンバーが連なる。その後も「一枚の楽譜」や「姫鏡台」など、山上×村井、山上×すぎやまによるシングルA面曲が並ぶ中、着目すべきは当時非売品シングルとして作られた「公園通り」である。

 渋谷を舞台としたこの楽曲は、公園通りのパルコのオープンに際し、ガロの写真展が開催された時に作られ配布されたキャンペーンソングで、井川拓の詞に山上が補作、村井の作曲によるもの。長らく幻のレコードであったが、パルコ50周年にあたるタイミングで当時の7インチ盤が復刻され、初めて市販されたばかり。ここに収録されたことも実に意義深い。

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