「“GLAYと知り合えてよかった”と思ってもらえる生き方を」 TAKUROに聞く、30周年迎えたバンドの現状

TAKUROが語る30周年迎えたGLAY

 GLAYからデビュー30周年記念シングル『whodunit-GLAY × JAY(ENHYPEN)-/シェア』が届けられた。ENHYPENのJAYとのコラボ曲「whodunit-GLAY × JAY(ENHYPEN)-」はスリリングかつハードな手触りのロックナンバー。そして「シェア」はシティポップ的なアプローチの温かいミディアムチューン。GLAYの幅広い音楽性、今もなお進化を求める姿勢を改めて実感できるシングルに仕上がっている。

 6月8日、9日には埼玉・ベルーナドームで『GLAY EXPO '99』を再現する『GLAY 30th Anniversary GLAY EXPO 2024-2025』を開催。また、7月には毎年恒例の「GLAYの日」、8月にはキャリア史上初の夏フェス出演となる『SUMMER SONIC 2024』などが続くGLAY。ニューシングルの制作を中心に、「GLAY EXPO」を掲げてアニバーサリーイヤーを彩るバンドの現状についてリーダーのTAKUROに聞いた。(森朋之)【インタビュー最後にTERU・JIRO・HISASHIによる特別コメントあり】

「楽しんでもらうために何でもやろう」という気合いと覚悟で迎えた30周年

GLAY TAKUROインタビュー写真(撮影=秋倉康介)

――GLAYは今年、デビュー30周年を迎えました。この記念すべき年に「GLAY EXPO」を掲げた理由を教えてもらえますか?

TAKURO:デビューしたときに「30年後もバンドをやっている」なんて、大抵のバンドは思っていないじゃないですか。いろんな人の支えがあって何とか30周年を迎えましたけど、35周年も当たり前に来るかといえば、それはちょっとわからない。世の中のこともそうだし、自分たちのことを含めて、こうやって楽しくバンドをやっていられるのが奇跡のような縁のおかげだとしたらーーもちろん35周年、40周年を目指すけれどもーーここで自分たちがいちばん大事にしているコンセプトである「GLAY EXPO」を掲げて、まずは一度、30年分のお礼とご恩を返しておきたいなと。「“この先はどうなるかわからない”なんて、縁起でもないことを言わないで」と思う方もいらっしゃるでしょうけど、ロックバンドが30年続くということの重大さはよくわかっていて。だからこそ「みなさんに喜んでほしい」という気持ちが強いし、新しいことも昔のことも含めて、「楽しんでもらうために何でもやろう」という気合いと覚悟で30周年を迎えています。

――最高の状態で30周年を迎えられるのは、確かに奇跡のようなことかもしれないですね。

TAKURO:そうだと思います。この前、僕とHISASHIで高校のときに大好きだったKENZI&THE TRIPSのライブを新宿LOFTに観に行ったんですよ。本当に久しぶりだったんですけど、ライブがはじまるとお客さん全員を80‘sに連れていくパワーがあって。「また元気で会おうな」という未来の約束もファンにとってはすごくうれしいじゃないですか。GLAYのファンからも「それ(活動の予定)があるからがんばれる」という声を聞きますからね。未来は不確かだけれども、約束はなるべくたくさんして、それを守るために気合いでがんばる。今回の「GLAY EXPO」が無事に終われば、ファンの人たちとの新たな約束も生まれるでしょうし、次はそこを目指して進んでいける。その繰り返しですよね。

――GLAYがデビューしたのは1994年。この30年で音楽を聴くメディアや制作方法も大きく様変わりしました。

TAKURO:メディアや制作環境に関してはHISASHIが先頭に立ってくれて、しっかり順応してきたと思っています。たとえばPro Toolsを使い始めたときは「音はアナログのほうがいいね」なんて言ってたんだけど、そのうちに「こっちのほうが便利だね」ということになって。そういう柔らかさを持てたのも良かったんじゃないかなと。いちばんはバンド内の雰囲気がずっと変わってないことかな。高校時代の文化祭の前日みたいな感じがずっと続いているし(笑)、そのまま今を迎えられたのはとてもうれしいですね。明日からライブのリハーサルなんですけど、すごく楽しみで。ドラムの永井利光さん、キーボードの村山☆潤くんを含めて、ドーン! と音を出すと「やっぱこれだよな」って毎回実感するんです。HISASHIの機材はどんどん増えていますけど、僕はめんどくさがりなので、ほぼアンプ直結みたいになっていて。「大事なのは自分の右手と左手だろ」みたいな開き直りもそうだけど、バンドキッズみたいな気持ちでやれています。以前は「絶対に1位を取る」「ミリオンを達成する」といったプレッシャーもありましたけど、今は純粋に音楽活動を楽しめているんじゃないかなと。

――バンド活動のモチベーションも変化しているんでしょうか?

TAKURO:音楽業界の変化も大きいですからね。昔は「○○ランキングで1位」というような明確な基準があったけど、今は何をもって自分たちの評価を測ればいいのかよくわからない。それぞれのコミュニティで盛り上がっている状況もあるし、何かしらの統一された基準ができるまでは、自分たちのフォームを崩さず、楽しくやったらいいんじゃないの? という。そんな話はメンバーのなかでもよくしてますね。

――目標やテーマを自分たちで決めて、そこを目指す。そのほうが健全ですからね。

TAKURO:そうですね。その時々のメンバーのメンタルや体調もあるし、去年のスケジュール、来年のスケジュールも含めて「今年はこういう活動がいいんじゃないか」とアイデアを出すのが僕の仕事なんですよ。毎年富士山やエベレストを目指すのもいいけど、同じ山にばかり登っていると「去年も行ったじゃん」ということになると思うんです。メンバーの喜ぶ顔を見られるのがいちばんだし、心から楽しめるようなことを考える。今回のシングルに入っている「whodunit」もそう。「1000年後に残る名作を作る」という美辞麗句はさておき、「未来ある若者と一緒にやるのは楽しいよね」という気持ちが強いんですよ。

世界で活躍するJAYとのコラボは、真面目にやってきたことへのご褒美

GLAY TAKUROインタビュー写真(撮影=秋倉康介)

――ではニューシングルについて聞かせてください。今も話にあった「whodunit-GLAY × JAY(ENHYPEN)-」は7人組グローバルグループ・ENHYPENのJAYさんとのコラボ楽曲です。

TAKURO:ここ数年、「TERUと渡り合える、刺激的なシンガーはいないだろうか」と探していたんですよ。なかなかハマらなかったんですけど、知り合いから「ENHYPENのJAYはロック、ブルース、ギターが好きで、日本語も堪能だよ」ということを聞いて。しかもアメリカ生まれで「すごくいいな」と思ったんですよね。実際にパフォーマンスを観させてもらったときも「このアーティストがGLAYのなかで大暴れしたら面白いだろうな」と。ワールドツアーをやっているようなグループなので「受けてくれるかな」と思ってたんだけど、オファーしたらすぐにOKしてくれたんですよ。後からJAYに聞いたんですけど、コンサートが始まる5分前に「GLAYというバンドが一緒にやりたいと言ってるけど、どう?」と言われたらしいんです。「もちろん知ってます。やります。じゃ、ライブやってきます」ってその場で決まったらしいですけど(笑)、それもご褒美だなって思いました。世界で活躍しているアーティストがGLAYのことを知ってくれていて、「一緒にやりたい」と思ってくれたのは、30年間真面目にやってきたことのご褒美だなと。

――「whodunit」はJAYさんが参加することを前提にして作った楽曲なんですか?

TAKURO:いえ、曲の原型は2007年にはありました。GLAYは大体そうなんですが、かなり前に作った曲に新しい要素を加えて完成させることが多いんです。高校時代から曲を書いてきたし、ずっと多作だったので。こだわっているのは、楽曲の“刈り取り時期”。「whodunit」も「そろそろいい時期だな」と思っていたし、そこにJAYとの出会いが重なって、彼をイメージしたパートを作って。それをHISASHIに丸投げして、さらにJIROがリズムにアレンジを加えてオケが完成したという流れですね。

――HISASHIさん、JIROさんの意向もしっかり反映されているんですね。

TAKURO:もちろん。僕とHISASHIは音楽的な原風景がほぼ一緒なので、「こんな感じで」といくつかのキーワードをやり取りすれば、完全にイメージ通りのサウンドにしてくれるんですよ。JIROはここ最近、踊るベースみたいなアプローチが増えていて、それがすごく新鮮で。曲を制作するときも、JIROのベースが最大限に活きることを重視する傾向があって。今までと同じような楽曲よりも、そのほうがバンド的には楽しいですし、それをどう売るかは僕の仕事なので。作っているときはメンバー全員が楽しくプレイできることを常に意識してますね。

――「whodunit」ではJAYさんも作詞に参加。

TAKURO:特にJAYのソロパートは自分の言葉で歌ったほうがいいと思って、「英語でも日本語でも韓国語でもいいから書いてくれませんか?」とお願いしたんです。たぶん1週間もかからなかったんじゃないかな。こちらとしても「せっかく参加してもらうんだから、思い入れのある曲にしてもらいたい」という気持ちもあったし、歌詞を書いてもらえたのはすごくよかったです。歌詞の内容については何も言ってなくて、「好きにやってくれたら、後は何とかするんで」といういつものGLAYパターンですね。

――なるほど。歌詞全体のテーマはどんなものだったんですか?

TAKURO:『俺たちに明日はない』に代表されるハードボイルド、フィルムノワールな感じですね。日本で言えば『あぶない刑事』もそうですけど、バディもので、主人公2人がピンチに見舞われながらも、力を合わせて抜け出し、未来に向けて手を伸ばすというか。MVのアイデアもあったし、キャリアのあるTERUとキレキレのJAYが歌や映像、ライブでせめぎ合うイメージですね。

GLAY×JAY (ENHYPEN) / whodunit

――ボーカルレコーディングは韓国で行われたそうですね。

TAKURO:HYBEのスタジオに行ってきました。JAYはすごく飲み込みが早いし、リズムの取り方が僕たちと全然違うんですよ。特に2番のAメロがそうなんですけど、あのボーカルのグルーヴは日本ではなかなか聴けないし、それを日本語で歌ったことも含めて、すごく面白い結果を生んだと思います。海外のリスナーにはオリエンタルに聴こえるかもしれないし、自分たちにとっては世界の入り口に立った気もして。オケを作ったのは僕たちなんだけど、でき上がってみると、全編においてJAYのリズムに支配されていましたね。度胸もあるし、一撃必殺みたいな声だし、世界基準のパフォーマンスを間近で体験させてもらって。JAYの声が多めになっているので、ファンのみなさんにもぜひ堪能してほしいです。

――JAYさんのボーカルを受け止めるGLAYのサウンドの度量の大きさも印象的でした。

TAKURO:どんな球が飛んで来るかわからなかったから、枠を設けてなかったんですよね。キャリアのおかげで、どんなものが来ても最終的にはきっちりまとめられるという自信だけはあって。予想と違ったほうがこっちとしては面白いし、「ヤバい、どうしよう」と思うと同時に「盛り上がってきたね」ってメンバー同士で言い合えるような状況を求めているところもあって。今回の制作にはそういうワクワクが多分にありました。

――本当に刺激的なコラボだと思います。コラボレーションできそうなアーティストに限らず、TAKUROさんご自身も新しい才能をいつもチェックしているんですか?

TAKURO:僕個人はそうでもなくて、興味があるのは戦前のブルースやジャズだったりするんです。いわゆるヒットチャートみたいなものをチェックすることもないんですが、子供が10代なので、車の中などで流している曲に触れることで「深くて広い音楽世界が広がっているんだな」と刺激を受けることは多いですね。いきなり中東のインディーズバンドの曲がかかったりするんですけど、そのなかで世界の根底に流れるトレンドみたいなものを受け取っているのかもしれないなと。TikTokもそうですが、今年の曲だけが流行っているわけじゃないですからね。昔の曲が何かのきっかけでバズることもあるし、自分たちに置き換えると、とても夢があるなと思います。時間を越えて聴いてもらえるチャンスが増えたという意味では、とてもいいことだなと。娘が10歳くらいのとき、いきなり松原みきさんの「真夜中のドア~stay with me」を歌い出したときはビックリしましたけどね(笑)。「俺が子供の頃の曲だよ」と言ったら、「アメリカの学校で今流行ってるよ」って。

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