リアルサウンド連載「From Editors」第53回:The BONEZが実現した“真のユナイト”と、人生を変えたPTPの1曲
「From Editors」はリアルサウンド音楽の編集部員が、“最近心を動かされたもの”を取り上げる企画。音楽に限らず、幅広いカルチャーをピックアップしていく。
第53回は、特撮とメタルが好きな信太が担当します。
The BONEZ『SUNTOWN』が隅から隅まで最高すぎた
アツいライブ。のっけから有り体な言い方ですが、この言葉が本気で当てはまるライブをやっているバンドは今、The BONEZだけではないかと思います。
昨日4月6日、47都道府県ツアー『The BONEZ 10th Anniversary Tour 47 AREAS』のグランドファイナル、幕張メッセイベントホール公演に行ってきました。バンド史上最大規模となる単独アリーナ公演の名は『SUNTOWN』。単に太陽に明るく照らされた場所というだけでなく、何度も地平線の下に沈んではまた這い上がり、そのたびに特別さを増していく輝きが、オーディエンス一人ひとりにとってのかけがえのない道標になっていく……そんな『SUNTOWN』は、The BONEZとBONER(ファンの総称)にしか作り出せない最高に激アツで、優しくて、思いやりに溢れたライブ空間でした。
The BONEZはそもそも、K(Pay money To my Pain)の死という大きな喪失から生まれたバンドでした。JESSE(Vo/Gt)曰く、「ベイビーズ(PTPファン)もRIZER(RIZEファン)もハードなファンになればなるほど、The BONEZを聴かない人が多かった」(※1)からこそ、ファンとの絆をゼロから、いやマイナスから築いてきたのがThe BONEZの10年間なのです。〈点取られても取り返すのみ〉(「We are The BONEZ」)という逆転劇は、まさにバンドの根底にあるマインドそのもの。だから、The BONEZが紡ぐ物語に夢を託さずにはいられないし、The BONEZ自身も誰一人として置いていかず、どんなきっかけであれ観にきたオーディエンスの心を絶対に離さないライブをするのだと思います。
昨年、JESSEは「痛みから生まれた俺たちのことを『こんなにも抱きしめてくれるのか、この野郎!』って思い続けてきた」「みんなを一緒にすごい景色に連れて行くことで、『俺を信じて、背負ってくれたことは間違ってなかったんだぜ』って思わせるしかない」と話してくれましたが(※2)、『SUNTOWN』はそれを証明するような、一つの集大成と言っていい最高のライブでした。
ライブレポートではないので詳細は書きませんが、47都道府県ツアーで掲げてきた“共存”というテーマが、過去最大規模の会場で難なく成立していることに特に感動しました。モッシュやダイブで鬱屈を発散させる人も、激しい動きは苦手だというコロナ禍以降の新しいオーディエンスも、親も子供も若者も、すべての人々の存在・生き方を尊重することで、分裂ではなく、むしろ固い団結が生まれるーーそれこそが、The BONEZのライブなのです。「Thread & Needle」の“WOW”の大合唱がこんなにも美しいのは、一人ひとりが自分らしさを解放していることの何よりの証。真のユナイトは、統一性の押しつけによってではなく、個々の自由を認めた先にこそ生まれるーーThe BONEZを観ていると、心からそう思えます。