JUBEEはヒップホップもロックも超越した“みんなの歌”を追い求める The BONEZとAge Factory迎えた3マンを観て

JUBEE、The BONEZら迎えた対バン企画

 そしてJUBEE。前述したようにDJ BAKUのプレイから始まり、1曲目には清水英介が再度登場。ハンドマイクの2人がそれぞれスクリームする「Boost」が始まっていく。歪んだギターと高速シーケンス、思わず首を振りたくなるタテノリを強調したラップは、2人のルーツにあるTHE MAD CAPSULE MARKETSが下敷きだろう。90年代後期の音が時を越えて今また響くことに妙な既視感を覚えるが、ここにいる客は当時を知らない20代がメインだ。クラブで遊んでいたらJUBEEと名乗る変なラッパーに出会い、気づけばライブハウスで生バンドとの共演を見ることになっていた。そこにマッドの歴史はあまり関係がない。

 むしろ大事なのは、自分で「俺、面白いヒップホップやってるでしょ?」などと言うJUBEEの存在だ。ラッパーなのに「ひとりでは起こりえない爆発的感情」を求めてウズウズし、Age Factoryとコラボバンド AFJBを始めてしまう。さらには今回『CROSSOVER』を企画し、主催者の自分がアウェイになる状況に興奮している。ラッパーかくあるべき、このシーンはこの形で、といった常識を情熱のみで打破していく様子が、「打ち込みなんてパンクじゃない」と言う声を無視してオリジナルを確立していったTHE MAD CAPSULE MARKETSに近い。ジャンルや時代では測れない相似性が重要なのだ。あらゆるパイオニアは最初ただの変なやつだった、という意味でなら、「これマジで伝説のイベントになるから」と言ったJESSEの言葉は大袈裟ではないかもしれない。

 DJ BAKUとJUBEEだけでも十分にラウドロック的。震えるような重低音と激しいスクリームを堪能できたが、最もグッときたのは冒頭に書いたMCを挟んで始まった最新曲「Playground」だった。自身のストーリーではない、〈もっと君と話がしてえ〉〈解放がテーマ/誰よりもライブ〉と語りかけるリリックは、このLIQUIDROOM全体に響くみんなの歌でもあった。

 アンコール。再び清水英介、さらには盟友ラッパーのin-dを呼び込んで始まった新曲の「slowsurf feat. eisuke shimizu & in-d」。続いて5月22日にリリースされたJESSEとのコラボ新曲「Vision feat. JESSE」。この2曲が激しさや攻撃性ではなく、柔らかさや優しさをたっぷりと含んだメロウな楽曲であったことも興味深い。マッドが好きで、あの爆発力を必死に求めるだけの季節はすでに終わっているのだろう。より多面的で奥深い感情の爆発を求め、ヒップホップもロックも超越するみんなの歌が、ここからさらに広がっていく。

※1:『indies issue 』vol.38

「Vision」ジャケット
「Vision feat. JESSE」

◾️リリース情報
2024年第2弾Single「Vision feat. JESSE」
発売日:2024年5月22日(水)
リリース形態:ストリーミング&ダウンロード
リンク:https://jubee-cds.lnk.to/Vision

JUBEE Official site

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